製紙大手の北越コーポレーションと大王製紙が戦略的業務提携に踏み切った。長年対立してきた両社だが、紙の需要が年々減少する厳しい経営環境の中、和解して生き残りを目指す道を選んだ。ただ、「物言う株主」はシナジー(相乗効果)を疑問視。両社にはかつて技術提携が破談した歴史もあり、今後の成果が問われている。

「過去の対立を言っている場合ではない」。大王製紙の若林頼房社長は提携発表翌日の16日、こう強調した。

提携は生産技術の向上や物流連携などを図る内容で、将来的にはOEM(相手先ブランドによる生産)の検討も視野に入れる。2026年度は北越に30億円、大王に20億円の営業増益効果を見込んでおり、北越は「おのおのの強みを生かし補完し合う」と提携に自信を示す。

日本製紙連合会によると、新聞用紙や印刷用紙などの需要はリーマン・ショック後に大きく後退。その後もデジタル化の進行で回復していない。

市場縮小への危機感が、恩讐を越えて「生き残りをかけた施策」(若林社長)に突き動かした。同社長は、昨年9月に秘密保持契約を結んで提携を議論してきたと明かした。

そもそも対立の発端となったのは、11年に大王で発生した創業家出身の前会長による背任事件だ。北越は12年に創業家が持つ大王株式の約2割を取得し、持ち分法適用会社化したが、売り上げ規模は大王が北越を上回り、経営方針を巡る対立が顕在化。両社の関係は悪化の一途をたどり、解消の兆しすら見えなかった。

このため、今回の急転直下の提携には疑問符が付く。北越の大株主で香港系投資ファンドのオアシス・マネジメントは「業界の競合同士で、本質的な利害対立がある」と指摘。同じく北越大株主の大王海運(愛媛県四国中央市)も「(提携は)株主批判回避のための実績作りだ」と批判する。オアシスは27日に開催を予定する北越の株主総会で、岸本晢夫社長らの解任案を提出する考えで、焦点は総会の行方に移る。

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