経済産業省は「SDV」と呼ぶ次世代車で日本車のシェアを高める新たな目標を掲げた。メーカー各社に関連技術の共同開発を促し、自動車市場での競争力維持を狙う。ただ日本の自動車産業は「ケイレツ」と呼ぶ縦のつながりが強固だ。次世代戦略の実現には、産業構造の転換も求められている。
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経産省は国土交通省と連名で20日に公表した「モビリティDX(デジタルトランスフォーメーション)」戦略案で、2030年にSDVを1200万台販売するとの目標を掲げた。世界市場見通しのシェア3割に相当する。
SDVは「Software Defined Vehicle」の頭文字で、直訳では「ソフトウエアが定義する車両」となる。車両に載せるソフトウエアの更新で、販売後にも車の付加価値を高めることができる。例えば衝突や蛇行の防止機能の強化などは、ソフト更新で修正できるようになる。
世界では米テスラや中国の比亜迪(BYD)がすでにSDVを販売している。国内勢は出遅れており、トヨタ自動車やホンダといった国内勢は25年以降の本格投入を予定する。経産省は展開速度を速めるため、新戦略では自社の独自性が出しにくい半導体や生成AI(人工知能)の7分野で、日系メーカー各社が共同で研究開発するよう求めた。
デジタル技術が開発を左右するSDV分野は、「ケイレツ」と呼ぶメーカー独自のサプライチェーン(供給網)で対応しにくくなってきていた。ケイレツは自動車メーカーを頂点として、部品や金型など関連産業が連なった供給網を指す。
経産省幹部は「メーカーが自前主義を捨て、デジタルで他企業との協調を重視し始めている」と話す。SDVの技術領域は広く、一社で開発を完結するのは困難だ。
実際に半導体分野では、23年12月にトヨタやホンダなど14社が参画する研究機関が立ち上がった。個別企業でもホンダがSCSKと自動運転向けのソフト開発で協業する。経産省の戦略を受け、今後は自動運転向けAIの学習データをメーカー各社が共有することや、デジタル人材を共同で育成するといった動きが具体的に進みそうだ。
独自開発が続く分野もある。ソフトウエアを動かす基盤となる自動車OS(基本ソフト)は「競争領域」として単独研究が進む見込みだ。トヨタは「アリーンOS」、ホンダも独自OSの開発を進める。米アップルが「iOS」を開発しスマートフォンのアプリストアを支配するように、車のOSはSDVのエコシステムの主導権を握るためだ。
今後は日本にはない海外IT(情報技術)のノウハウ活用も求められる。自動車産業に詳しい伊藤忠総研の深尾三四郎上席主任研究員は「SDV戦略では日系企業だけでなく、先行する米国のIT企業などと連携する視点が必要だ」と指摘する。
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