イオンはゴミ処理場のCO2を活用したイチゴ栽培の実験を実施する(21日、東京都町田市)

イオンは21日、都内のゴミ処理施設で排出された二酸化炭素(CO2)で栽培したイチゴの販売を2026年までに目指すと発表した。一般家庭のゴミを燃やして出たガスから有害物質を除き、浄化したCO2をイチゴの葉の裏にあてて生育を促す。果肉は通常より1割強大きく育ち、甘みが増す。外部の検査機関でイチゴの安全性を確認し、近隣の店舗で販売する計画だ。

同日、都内にあるゴミ処理施設「町田市バイオエネルギーセンター」の実験施設を報道陣に公開した。イオンのほか、ごみ処理設備大手のタクマや同市などが協力する。施設に小型の栽培ハウスと燃焼ガスの浄化設備を置き、23年11月から実証実験している。

黒いチューブからCO2を出してイチゴの粒を大きくする(21日、東京都町田市)

新手法では焼却炉で家庭ゴミを燃やして発生したガスを専用の浄化設備に回し、窒素酸化物(NOx)など有害物質を取り除く。その後、CO2を黒いチューブでハウス内まで運んでイチゴの葉に吹きかける。CO2を従来に比べて15倍の量で吹きかけられるため、果肉は通常に比べ15%大きく、収穫量も15%増える。イオンの担当者は「CO2を多く吸収するため、理論上はイチゴの甘みも増す」という。

従来、一部のイチゴ農家は工場などから液化炭酸ガスを購入したり、ボイラーで灯油を燃やしたりしてCO2を取り出して葉に吹きかけていた。ただ、化石燃料を使うためCO2の排出量が増えるほか、液化炭酸ガスの購入費用も加わりコストが高くなりがちだった。

新手法ではゴミの焼却ガスを再利用するため、CO2の排出量は年間で940トン減り、年1300万円かかる液化炭酸ガスの購入費用もなくなる。新手法が実用化されれば、店頭での販売価格は従来から据え置いたままで、大きなイチゴを扱うことが期待できる。

イオンの農業子会社、イオンアグリ創造(千葉市)の福永庸明社長は「ゴミ処理施設が排出するCO2を循環する仕組みを確立し、後世に残せるものにしていきたい」と話した。

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