決算発表する三菱UFJフィナンシャル・グループの亀澤宏規社長(15日、日銀本店)

「金利ある世界」が訪れ、邦銀の業績が上向いている。三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)など5大銀行グループの2024年3月期は連結純利益が3兆3千億円を超え、05年度に3メガバンク体制になってからの最高だった。銀行は好業績を経済成長につなげる責務がある。

マイナス金利政策解除による貸し出し利ざや改善の恩恵が本格化する25年3月期は、三井住友FGが初の1兆円超の純利益を見込むなど増益基調が続く。経済の要である銀行の収益が上向き、財務が安定するのは好ましいことだ。

海外事業が好調だった大手行には見劣りするが、地方銀行の業績もおおむね堅調だ。24年3月期は上場地銀73行・グループの7割に当たる51行が最終増益となり、収益改善の裾野は広がっている。

三井住友FGの中島達社長は「相場環境、お客様の行動といったほとんどすべてのものが銀行業績にプラスに働く状況だった」と語った。収益を押し上げる追い風が吹く間に、本当の意味での稼ぐ力を高める必要がある。

銀行に求めたいのは、顧客である企業や個人との関係を深め、時代の変化に即した多彩なサービスを提供することだ。そのためにはIT(情報技術)システムなどへの積極的な投資も欠かせない。国内をベースに海外の事業を育て、収益源を多様にしたい。店舗も柔軟に見直してほしい。

「金利ある世界」になると利払い負担は重くなり、経営が苦しくなる企業も出てくるだろう。銀行は取引先の経営に今まで以上に注意を払い、ときには巧みに導いていく力が問われる。銀行は単に個々の取引先を守るだけでなく、経済や産業の新陳代謝を促す大きな視点に立つべきだ。

前期決算ではあおぞら銀行や山形県のきらやか銀行のように、国内外の取引にまつわる予想外の損失が発生して赤字に陥るケースも出てきた。銀行を取り巻く環境が良くなってきたとはいえ、油断は禁物だ。リスクを見極め管理する腕を磨かなければならない。

邦銀にとって歴史的な利益水準も米銀と比べればなお低い。邦銀大手のPBR(株価純資産倍率)が軒並み解散価値の1倍を下回っているのは、銀行の稼ぐ力に対する株式市場の厳しい評価を物語っている。銀行の経営者は市場の評価を一変させるような成長シナリオを描いてもらいたい。

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