セブン&アイ・ホールディングス傘下の総合スーパー(GMS)、イトーヨーカ堂は22日、総菜の新ブランド「ヨーク・デリ」を始めると発表した。グループの開発力や商品力を生かして250品を約200店で売り出す。不採算店舗の閉鎖などで構造改革を進める中、需要が見込める総菜をテコ入れし、売り上げ拡大につなげる。
ヨーク・デリは「『毎日食べたい』おいしさ。」をコンセプトにする。ヨーカ堂が初めて衣料品のプライベートブランド(PB)を発売した際に使ったブランド名が「ヨーク」だったという。新ブランドにはヨーカ堂の創業から使うハトのマークも据えることで、改めて原点に返る思いを込めた。
新ブランドでは弁当やだし巻き卵、鶏もも唐揚げ、ポテトサラダなどを取り扱う。米は京都の米老舗「八代目儀兵衛」監修のもと、弁当に合うブレンドや精米にこだわった。
ヨーカ堂の伊藤弘雅取締役は同日開いた説明会で「各店と地域のニーズに寄り添った商品も開発していく」と説明した。昨秋に合併した食品スーパーのヨークを合わせた約200店を対象に、同日から新ブランドの商品販売を始めた。
ヨーカ堂の山本哲也社長は自社の総菜について「これまでブランドがバラバラで色々と乱立していた」と述べた。今回でブランドを一本化するほか、25年度に全ての総菜をオリジナル商品に切り替える方針を示した。ヨーカ堂の総菜の認知度を上げつつ、「ヨーカ堂にしかない商品」を来店動機の一つにしていく考えだ。
単身世帯の増加などを背景に市場拡大が続く総菜をめぐっては、ライフコーポレーションやイオンなど競合他社も力を入れている。ヨーカ堂が総菜強化に動いたのは「総菜でスーパーを選ぶ人の割合が4割ほどいるなか、ヨーカ堂は選ばれていない」(山本社長)との危機感がある。総菜の品質向上や品ぞろえの充実を進めることで、食品販売のテコ入れにつなげる。
親会社のセブン&アイは2月、千葉市内に総菜などを作るセントラルキッチンを稼働させた。工場で働く従業員はグループの食品スーパーで総菜の評価が高いヨークベニマルの製造工場に出向き、素材本来のおいしさを引き出す手法を学んだ。7月までに35品の総菜をイトーヨーカドーやヨークに提供する。
今回の取り組みに加え、ヨーカ堂は24年度に約200億円を投じ、総菜を含む食品売り場などの改装も実施する。投資額は23年度の3倍超で、食品売り場を中心とした改装を始めた17年以降では最大規模となる。最新設備の導入や回遊のしやすいレイアウト変更などで、来店者の購買意欲を高める狙いだ。
もっとも、ヨーカ堂の業績は厳しい。24年2月期まで4期連続の最終赤字で、今期も「店舗閉鎖を含めてうみを出し切る」(セブン&アイの井阪隆一社長)。黒字転換に向けた構造改革として、この1年は店舗閉鎖や人員削減、本社移転といったコスト削減の発表が多かった。従業員の間では士気の低下や将来に対する不安の声が聞かれる。
ヨーカ堂の山本社長は「24年は会社の売上高を伸ばす成長戦略を実行していく」と強調する。スーパー事業の中心である食品分野の総菜の強化で再浮上のきっかけをつかめるか、取り組みの成否に注目が集まる。
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