帝国データバンクは24日、自動車産業のサプライチェーン(供給網)に関する調査結果を発表した。自社製品の生産コスト上昇分を納入先への販売価格に「全く転嫁できていない」などと答えた企業は全体の1割に上った。転嫁ができている企業の割合は8割に達しているものの、転嫁できた割合は「2割未満」が最多だった。下請け企業の苦悩が浮き彫りになった。
帝国データが2024年2月に実施した調査を基に約1500社を抽出して分析した。
円安や物価高などで素材や部品の仕入れ価格は上昇傾向にある。「(多少なりとも)転嫁できている」と回答した企業の割合は80.7%に達した。ただ、このうち転嫁できた割合はコスト上昇分のうちの「2割未満」が23.2%で最も多く、「5割以上8割未満」が20.9%、「2割以上5割未満」が17.7%と続いた。
「全て価格転嫁できている」と答えた企業は3.9%にとどまった。一方で「全く価格転嫁できていない」「コスト上昇したが、価格転嫁するつもりはない」と回答した企業は合計で11.9%あった。
日本自動車工業会(自工会)は23日に、日産自動車が下請法違反の勧告を公正取引委員会から受けた問題を踏まえ、原材料・エネルギー費などの適正な上昇分については下請け企業からの価格転嫁の受け入れを目指す方針を示している。
トヨタ自動車、ホンダ、日産の大手3社の供給網に属する企業を1次下請け、2次下請け、3次下請け以降の階層別に分析したところ、3次下請け以降で「全く価格転嫁できていない」などと答えた日産系企業の割合は16.4%で、トヨタ系の14.3%、ホンダ系の13.8%と比べて高かった。
帝国データは「自動車産業の巨大な供給網全体を把握するのは困難を伴うが、業界として取引適正化の動きが進めば、他の業界にとっても価格転嫁のモデルケースになりうる」(情報統括部)としている。
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