6月から暮らしに関わる制度や仕組みが変わります。物価高の影響を受ける国民への支援策として「定額減税」が始まります。一方で、年金支給額は実質的な目減りとなり、食費などの値上げラッシュは続きます。新たな税負担も重なり、定額減税の効果が薄くなりかねません。主なものをまとめました。
定額減税スタート
1人あたり4万円の税負担を減らす定額減税が始まります。給与などにかかっている所得税3万円と住民税1万円の計4万円が減税されて手取りが増えます。納税者本人と配偶者など扶養家族を対象とし、夫婦と子供2人の4人世帯の減税額は計16万円となります。
6月分の給与や賞与で引き切れなかった減税額は、7月以降に繰り越されます。年内に減税しきれない場合は今夏以降に自治体から給付金が支給されます。
年収2000万円超(合計所得1805万円超)の高所得者や、海外に住む扶養家族は対象外です。減税額は給与明細や納税通知書に表記されます。
政府は物価高で苦しむ家計を支援し、「物価と賃上げの好循環」の持続を目指しています。定額減税のための財政措置は3兆円規模に上ります。所得が低い人ほど減税が複数回に分散するため、一括給付より実感を持ちづらいとの指摘もあります。
食品、光熱費が値上げ
6月は人気菓子などの値上げや光熱費の負担増などが予定されています。
カルビーは「ポテトチップス」「じゃがりこ」「かっぱえびせん」など68商品の価格を1日以降、3~10%程度引き上げます。明治は「アポロ」など54商品、ハウス食品も「とんがりコーン」など6商品を値上げします。原材料費や物流費などの高騰が理由で、まるか食品は「ペヤングソースやきそば」などの即席麺13商品を5年ぶりに値上げします。
大手電力10社と都市ガス大手4社の6月請求分(5月使用分)の電気・ガス料金は、政府の補助金が半減するため、全社で前月より値上がりします。電気料金は平均的な家庭で357~585円値上がりし、補助金が終了する7月はさらに上昇する見通しです。
年金支給額実質目減り
4、5月分の年金は6月14日に振り込まれます。年金の支給額は物価や賃金の変動に連動して毎年4月に改定されています。4月以降の年金は物価や賃金の上昇に伴い、2・7%引き上げられるものの、将来の年金の給付水準を確保するため物価や賃金の伸びよりも低く抑えられており、実質的に目減りします。
具体的な支給額は、平均的な給与で40年間働いた夫と専業主婦の「モデル世帯」で、月23万483円(前年度比6001円増)。自営業者らが加入する国民年金のみ加入する人のうち、24年度中に68歳以下の人は満額で1人6万8000円(同1750円増)で、69歳以上の人は6万7808円(同1758円増)となります。
森林環境税の徴収開始
森林整備などを目的とする新たな税金「森林環境税」の徴収が6月から始まります。住民税の納税者1人につき年1000円を上乗せします。ただし、定額減税の実施に伴い、6月の住民税の徴収がゼロ円となる人は7月からの徴収となります。
年1000円は2023年度で徴収が終わった東日本大震災の復興を目的とした住民税の上乗せ分と同額のため、負担増は見えにくいですが、対象者は約6000万人に上ります。年約600億円と見込まれる税収は市区町村と都道府県に配分され、森林の間伐、林業の人材育成、木材の利用などに使われます。
自治体への森林整備財源の配分(森林環境譲与税)は、森林環境税の徴収に先立ち、19年度から始まっています。ところが、都市部への配分が多かったため、「財源を使い切れない」という問題が浮上。24年度からは人口が少なく森林面積が多い自治体への配分額を手厚くするため配分基準を見直しました。
診療・介護報酬改定で負担増も
医師らの技術料や人件費にあたる診療報酬の本体部分が、0・88%上がります。医療機関を初めて受診した時に支払う初診料を20年ぶりに増額。多くの場合で、初診料(現行2880円)が90円、再診料(同730円)は40円上がる見通しです。3割負担の人では初診料が27円、再診料は12円の負担増となります。入院基本料など診療に関する基本的な利用料も上がります。
医療機関の準備期間を取るため、今回から改定の時期を4月から6月に変更しました。これに伴い、介護報酬で医療と連携するサービスの改定も6月になりました。対象は訪問看護と通所リハビリテーション、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導の4サービス。訪問看護でみとり期への対応などが上がります。【杉山雄飛、道永竜命、山下貴史、神足俊輔】
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