昨年10月に始まったインボイス(適格請求書)制度の影響で、独占禁止法(優越的地位の乱用)に抵触しかねない民間取引が行われる恐れがあるとして、公正取引委員会が未然防止のため事業者に「注意」を出したケースが2023年度に40件あったことがわかった。公取委が28日、発表した。

 公取委はかねて、強い立場を利用し取引先に不利益を与える「優越的地位の乱用」を警戒し、懸念があれば未然防止のため「注意」を出している。23年度は67件で、うち6割の40件がインボイス絡みだったという。

 個別ケースは原則公表されないが、関係者によると、ひとつは、日本たばこ産業(JT)が葉タバコ生産農家に一方的に取引価格の引き下げを通告したケースが対象だった。同様の通告は、芸能事務所がナレーターに▽人材派遣業者が翻訳者や通訳者に▽声優プロダクションが声優に――という構図でも確認されたという。

 インボイスは、売り手が買い手に対し、商品ごとに消費税率や税額を伝えるため発行する請求書のこと。導入していない零細事業者に、買い手が一方的な価格の引き下げ圧力をかけかねないとの懸念が出ていた。(増山祐史)

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