石油メジャーの米シェブロンはヘスを買収することで南米ガイアナの有望鉱区の取得を目指した=ロイター

【ヒューストン=花房良祐】石油会社の米ヘスが28日開いた臨時株主総会で、石油メジャーの同シェブロンによる530億ドル(約8兆3000億円)の大型買収案が承認された。一部の株主のヘッジファンドは買収に不透明感があるなどとして棄権を表明していたため、可決されるかに注目が集まっていた。

今回のヘス総会の決議により、シェブロンによるヘス買収の焦点は、同じ石油メジャーである米エクソンとの係争の行方に移る。

シェブロンは2023年10月、ヘスを株式交換で買収することで合意したと発表した。ただし、ヘスが保有する南米ガイアナの海底油田の共同事業体に参画している米エクソンモービルが、この買収を巡って国際仲裁を申し立てた。

石油開発の共同事業では他社に権益を譲渡する際に、既存参加者も同じ条件で譲渡を受けられる権利を有していることが多い。エクソンは企業買収でもこの権利が有効だと主張する。一方、シェブロンは権利が発生しないとしている。

ガイアナの海底油田はエクソンとヘス、中国海洋石油(CNOOC)が開発する有望鉱区。近年、急速に生産量を増やしており、シェブロンがヘスを買収したい最大の理由だ。シェブロンはガイアナの資産を組み込むことで自社の石油生産量を増やせるとみていた。

ただ、国際仲裁でエクソンに有利な判断が下されれば、買収案は破談となる可能性が高い。今後ヘスを買収したいと考える企業も二の足を踏むことになる。

シェブロンは当初、買収完了の目標時期を24年前半としていた。エクソンの法的措置により、現状では買収案の可否が判明するのは25年にずれ込む見通しだ。

ヘスの株主総会では、議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は賛成すべきでないと推奨していた。シェブロンはヘスよりも配当金の支払いが多く、買収の遅れでヘス株主は得られるはずだったシェブロンの配当を得られていないと不満を募らせている。ISSはシェブロンに対し、ヘス株主に補償を支払うべきだと主張している。

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