人工知能(AI)を利用すると、仕事の効率が2割アップ――。独立行政法人「経済産業研究所」(RIETI)の森川正之・特別上席研究員の調査で、こんな結果が出た。仕事でAIを使う人は全体の5・8%とまだ少数派で、利用率も業種によって7倍もの開きがあるが、実際に利用すると効果が実感されており、森川氏は「AIは潜在的にかなり大きな生産性効果を持つ可能性がある」と分析している。
生成AIを含むAIの利用状況などについて、2023年9月、就業者1万3150人を対象に調査、分析した。
これによると、AIを「仕事で使っている」との回答は全体の5・8%にとどまった。年代や性別、学歴でみると、「20代」「男性」「大学院卒」の利用率が高かった。
業種別では、情報通信業(14・2%)に続き、弁護士やコンサルタントなどを含む専門サービス業(9・7%)、金融・保険業(8・9%)、製造業(8・6%)の利用率が高かった。これに対し、宿泊・飲食(2・1%)、医療・福祉(2・5%)、不動産業(3・4%)では利用が進んでいなかった。
では、AIの利用で仕事の効率はどのくらい高まるのか。AI利用者に主観的に答えてもらったところ、全産業の平均で21・8%の効率性向上が実感されていた。
電力・ガス・熱供給業や農林水産業、金融・保険業など一部の業種では10%程度の業務効率化だったが、多くの業界で20%を超えた。特に専門サービス業や運輸業のほか、AI利用の進んでいない宿泊・飲食業では30%近い効率化が感じられていた。AIと縁遠そうに見える業界でも、実際に使ってみると、効率化につながることをうかがわせる結果になった。
仕事以外での使用を含めると、就業者の16・1%がAIを利用するようになっており、今後は仕事での利用率をいかに増やせるかが焦点となりそうだ。
森川氏は「仮にこうした人々も仕事で利用するようになると、経済全体の効率性が5%程度高まる計算になる」と分析。現状は、高学歴のホワイトカラー就業者がデスクワークで利用する傾向が強いものの、「今後、AIの経済効果を高めていく上では、さまざまなタスクへのAIの適用が課題になる」と指摘している。【中島昭浩】
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