日本商工会議所は5日、2024年4月時点の中小企業の賃上げ状況に関する調査を発表した。23年4月と比べた正社員の賃上げ率は加重平均で3.62%だった。日商は中小企業に賃上げの動きが広がっていると分析するものの、大企業とはなお差がみられる。
経団連が5月に公表した24年の春季労使交渉の1次集計結果では、大手企業の賃上げ率は5.58%と33年ぶりの高い水準だった。日商の調べでは賃上げ率が5%以上の高さだった中小企業は全体の24.7%にとどまった。
日商が賃上げ率をまとめたのは初めて。23年4月と24年4月の両時点に在籍し雇用形態などが変わっていない従業員を対象に調べ、1979社から回答を得た。定期昇給とベースアップ(ベア)を分けずに集計した。
従業員が20人以下の企業では賃上げ率が3.34%だった。賃金を下げたのは全体の5.2%にとどまった。
賃上げ率を業種別でみると小売業(4.01%)や情報通信・情報サービス業(3.69%)が高かった。運輸業(2.52%)と医療・介護・看護業(2.19%)の伸び率は限定的だった。運賃や医療費などの価格が固定的で、賃上げの原資を捻出するのが難しい場合が多いという。
連合が5日に発表した春季労使交渉の第6回集計では組合員数300人未満の中小組合の賃上げ率は4.45%だった。連合は月例賃金の改善を要求した労働組合が調査対象だ。日商は回答の半数近くが従業員20人以下の小規模事業者で、労組がない企業も多い。
日商の調査ではパート・アルバイトの賃上げ率は3.43%だった。医療・介護・看護業(4.86%)や運輸業(4.67%)が高く、非正規労働者を賃上げすることで人手を確保している。
24年度に賃上げを実施したか、実施予定と答えた企業は74.3%に上った。このうち業績の改善がみられないが賃上げする「防衛的な賃上げ」が6割近くで、業績の改善を踏まえた「前向きな賃上げ」を上回った。
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