賃上げによる収入増でも、実感を得られている人は意外と少ないようだ(写真は7月に発行される新しいデザインの紙幣の見本券)=日銀静岡支店で2023年9月12日、皆川真仁撮影

 賃上げでも暮らし向きは変わらない――。人手不足や物価高を背景に賃上げの動きが広がっている。だが、実際に賃上げで収入が増加した人たちの多くが、今後の暮らし向きについてポジティブな見方をしていないことが野村総合研究所の調査で明らかになった。

 調査は2024年5月7~8日、インターネットで実施し、20~59歳の男女2680人から回答を得た。24年1月1日から調査時点までの4カ月あまりの間に、勤務先の賃上げで収入が増えたと回答した人は33・3%。24年中に賃上げにより収入が増加する予定の人を合わせると45・4%だった。逆に、24年中に収入が増える予定がない人も54・6%にのぼった。

 賃上げで収入が増えた人に、今後の暮らし向きが良くなると思うかを尋ねたところ、58・6%が「変わらない」と回答。「良くなる」と「やや良くなる」を合わせた36・7%を20ポイント以上上回った。働くモチベーションについては、上がった(「上がった」と「やや上がった」の合計)が53・5%で、半数を超えた。

 一方で、24年中に賃上げで収入が増加する予定がない人は、正規雇用者が44・4%だったのに対し、非正規雇用者は69・7%と高い割合だった。従業員数が少ない企業に勤める人ほど賃上げ予定がない割合が高く、業種別ではサービス業で高い傾向がみられた。

 野村総研未来創発センターの武田佳奈氏は「政府が目指す『成長と賃金の好循環』を実現できるかどうかは、どれだけ多くの人が一過性ではなく長期的に、賃上げによる収入増加の実感を得られるかにかかっている」としている。【後藤豪】

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