資生堂は、ダイバーシティ・エクイティ・アンド・インクルージョン(DE&I)を経営戦略の柱と位置づける

資生堂は2023年末に男性社員の育児休業取得率が100%を達成した。理解促進のために様々な施策を実施し、21年には34%だった取得率が向上した。今後も取得促進の取り組みを継続し、社員がライフイベントにかかわらずキャリアアップできる環境整備を目指す。

資生堂の育休取得率は21年末時点で女性社員は100%だったが、男性社員は34%にとどまった。22年4月に国内のグループ全体で男性の育休取得率を23年末までに100%とする目標を設定していた。23年の男性の育休取得者が167名となり、同年に配偶者が出産した全ての男性社員が取得した。

管理職向けのセミナーや、子どもが生まれた男性社員に祝福メッセージとともに育休取得について声がけするなど、育休を取りやすい組織風土づくりを心がけている。

こうした施策のなかで特に効果的だったのが、保育事業を手がける完全子会社のKODOMOLOGY(コドモロジー、東京・港)による体験型育児トレーニング「イクトレ」だ。初めて育児をする親を想定し、新生児のケア方法や仕事との両立を含めた出産後の生活の準備を学べるほか、妊婦スーツを着て妊婦体験できる。

社内で実施した体験型育児トレーニングの様子

出産後に復職する女性社員に対しては、育児と仕事の両立への不安を軽減するための「ウェルカムバックセミナー」を実施している。育児休業からの復職率は92%となっている。

資生堂は、ダイバーシティ・エクイティ・アンド・インクルージョン(DE&I)を経営戦略の柱と位置づける。性別を問わずすべての社員が育児と仕事を両立できる環境づくりに向け、今後も対象者への取得促進の案内は継続していく考えだ。

男性の育児や家事への参加は法律も後押しする。22年4月には育休制度の周知などが企業の義務となり、同年10月に「産後パパ育休」制度が創設された。24年5月には育休取得率の公表が義務となる対象企業を広げる改正育児・介護休業法が成立した。

厚生労働省の23年の調査によると、従業員1000人超の企業のうち、男性の育休等取得率は46.2%だった。23年の合計特殊出生率が過去最低を更新するなか、男性の育休取得率向上への企業の取り組みがこれまで以上に求められる。

(荒木玲)

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