洋菓子店の倒産は過去最多ペースで推移している

洋菓子店の倒産が急増している。帝国データバンクが7日に発表した調査によると、「街のケーキ店」を中心とした洋菓子店の倒産(負債1000万円以上、法的整理)は1〜5月に18件あった。2000年以降で最多だった19年を上回るペースだ。原材料や人件費の高騰に加え、コンビニエンスストアなどとの競争激化が背景にある。

最多だった19年は年間49件、1〜5月は16件で、24年は2件多いペースで推移している。洋菓子店の倒産は閑散期の夏以降に増加する傾向にあり、年間の倒産件数は過去最多を更新する可能性がある。

背景にあるのが原材料価格の高騰だ。23年以降、洋菓子作りに欠かせない砂糖や生クリームなど、原材料のほぼ全てで値上げが相次いだ。価格高騰に耐えられず、事業継続を諦めた店が目立った。

特に高騰が目立つのがチョコレートだ。原材料であるカカオ豆は主産地の西アフリカで不作が続く。円安の影響も加わり、欧州産など輸入品の平均価格は5年に比べ約2倍に上昇した。23年の猛暑で収穫量が減少した果物も、全体の平均価格が5年前比4割増となっている。

電気代や人件費の負担も重くのしかかる。コスト増が続くなか、客離れへの懸念から十分に価格転嫁できたケースは少なく、店を畳む決断をしたケースも多かったとみられる。

それだけではない。洋菓子販売を巡る環境の変化も倒産増加の一因だ。洋菓子メーカーのモンテール(埼玉県八潮市)の消費者向け調査によると、スイーツを購入する場所(複数回答)として「専門店」を挙げた人は25.5%と、1位の「スーパー」(61.7%)や2位の「コンビニ」(51.5%)に次ぐ3位だった。専門店での購入は年代別では10代で8.8%、20代で10.5%にとどまるなど、若年層の取り込みに課題がある。

身近なコンビニ・スーパーに加え、無人スイーツ専門店も存在感を高めている。24時間営業のスイーツ専門店「24トゥエンティフォー」はアイスやケーキなど有名店のスイーツを冷凍で販売。7日時点で全国に94店舗を展開するなど、拡大を続ける。

帝国データバンクの飯島大介氏は「洋菓子店の多くは夜の早い時間に商品がなくなる。コンビニは夕方以降の、無人スイーツ店は『とっておきのスイーツが食べたい』という需要をうまくつかんだ」と分析する。

小麦粉やレーズンなどは今後も価格高騰が見込まれ、値上げラッシュは続く。使用する原材料の見直しや適切な価格改定など、洋菓子店に求められることは多い。飯島氏は「出来たてを提供できるのが専門店の強みだ。季節やトレンドに合わせた商品を開発し展開できるかが、成否を左右しそうだ」と話した。

(井上みなみ)

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