石油製品の需要が減るなか、製油所の運営を効率化する(千葉県の富士石油の製油所)

出光興産は16日、石油精製を手がける富士石油と資本・業務提携することで合意したと発表した。出資比率を現在の13.04%から21.79%に引き上げて持ち分法適用会社にし、原油の調達・輸送で協力し、アンモニアなど脱炭素燃料の拠点整備で共同投資も検討する。石油製品の需要が縮小するなか、提携でエネルギー事業を再構築する。

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出光は3月に住友化学から富士石油株を取得して筆頭株主となっていた。16日付で国内発電最大手のJERAが保有する富士石油株(発行済み株式の8.75%に相当)をすべて買い取る契約を結んだ。取得額は24億円。取得時期は公正取引委員会の通知などを踏まえて決める。出光は現時点で「さらなる株式取得は考えていない」という。

出光と富士石油は千葉県の京葉臨海コンビナートの近隣で製油所をそれぞれ構える。生産能力は出光が日量19万バレル、富士石油が同14万3000バレル。提携を機に早ければ年内にも原油やナフサの調達、船舶を使った輸送業務を共同で行う方針だ。

製油所の定期修理や精製設備の部品交換で発注先の会社をそろえ、製油所の運営コストを抑える。具体的に運営・維持費用をどのくらい減らせるのかは今後精査する。今回の提携では「製油所の統廃合や集約は前提にしていない」(出光幹部)という。

両社は今後、水素やアンモニア、再生航空燃料(SAF)など脱炭素につながる次世代燃料の受け入れや供給拠点の整備に向けた共同投資も検討する。富士石油は石油精製が主力で、出光向けが売り上げの6割以上を占める。製油所は千葉県の1カ所のみで、単独では脱炭素への対応や生き残りが難しいと判断した。

1990年代まで10社以上あった石油元売りは業界再編が進み、現在はENEOSホールディングス、出光、コスモエネルギーホールディングスの大手3社にほぼ集約された。各社が主力とする石油製品は省エネルギー自動車の普及や再生可能エネルギーの開発で需要が減少。経済産業省がまとめた石油製品の市場予測によると、燃料油の需要は27年度に1億3832万キロリットルと、21年度比で8%落ちこむ見通し。

各社は既存の製油所が稼ぐ資金をもとに脱炭素燃料の製造装置やサプライチェーンへの投資を急ぐ。老朽化した既存の製油所の効率運営も課題となっている。

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