経団連は10日、希望すれば結婚後も夫婦がそれぞれ従来の姓(名字)でいられる「選択的夫婦別姓制度」の導入を求める提言を公表した。国際化が進むビジネスの第一線で活躍する女性が増える中、旧姓を職場で通称として使用する日本独特の仕組みを「企業にとってビジネス上のリスク」だと指摘。政府に対し、制度導入を盛り込んだ民法の改正案を、国会に「一刻も早く提出」するよう求めた。
経団連は今年1月と3月に、選択的夫婦別姓の導入を政府に要望していたが、組織の意向を強く反映する提言にまとめたのは初めて。
日本は世界で唯一、結婚した際に夫婦が必ず同じ姓に統一するよう法律で規定している。だが、改姓してもそれまで職場で認知されてきた旧姓を使い続けたいと考える女性らは多い。このため、企業では旧姓をビジネスネームとして使う「通称使用」が拡大している。
経団連の提言はこの通称使用について、海外では理解されにくいことなどから「女性活躍の着実な進展に伴い、企業にとってもビジネス上のリスクになりえ、企業経営の視点からも無視できない重大な課題」だと指摘した。例として、海外出張時に大使館やセキュリティーの厳しい企業を訪問する際、通称が記された名簿と公的な身分証の氏名が異なることで立ち入りを拒まれるトラブルが多く起きていることを挙げた。
提言は、経団連会長及び20人の副会長らの協議や、幹事会での承認を経て機関決定される。経済界の意見をとりまとめる経団連はこれまで、法人税の引き下げなど経済政策を中心とする提言で政府に影響力を発揮してきたが、家族法制の見直しの提言に踏み込むのは異例だ。【町野幸】
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