アップル本社でAIについて説明するフェデリギ氏㊨とジャナンドレア氏㊥=ロイター

【シリコンバレー=中藤玲】米アップルは10日、自社開発の生成AI(人工知能)サービス「Apple Intelligence(アップルインテリジェンス)」を発表した。アップル幹部は記者を集めた説明会で、AIが不適切な回答をしないように「慎重に学習データを選び、試験を繰り返した」と語った。自社開発の半導体を使うなどして、3段階での安全対策にも取り組んでいる。

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ソフトウエアエンジニアリング担当のクレイグ・フェデリギ氏と、機械学習とAI戦略担当のジョン・ジャナンドレア氏の両シニアバイスプレジデントが、米カリフォルニア州の本社で一般向けには非公開の説明会を開いた。

アップルインテリジェンスは基本的に、自社開発した最新半導体を使い、iPhoneなどの端末内で動作する。データを保護できる一方で、プライバシーを重視する姿勢がAIのデータ収集の妨げになるかと問われたジャナンドレア氏は「データを保護してプライベートにしているからこそ、個人データを使うことができる」と述べた。

AIが複雑な処理をする際にも、アップル製の半導体を使って構築した専用の自社AIサーバーを用いることで、情報の秘匿性を高める。フェデリギ氏は「クラウドにもiPhoneと同じようなセキュリティーとプライバシーのモデルを広げていきたい」と話した。

アップルのAIが回答できない質問については、米新興オープンAIの対話型AI「Chat(チャット)GPT」が回答する。その場合は利用者に、質問や文書、写真がチャットGPTに送信される前に許可を求めるようにした。

フェデリギ氏はチャットGPTとの連携について、「自社サーバーで実行されている大きなモデルはアップル製だ。だが外部にもモデルは存在し、驚くべき専門知識を持つものもある。我々の補完をするためには、まずオープンAIの技術『GPT-4o』がベストだと考えた。アプリを行ったり来たりして使い勝手を損なうことなく利用できるようにした」と狙いを話した。

またチャットGPTに接続するなどアップルのプライバシーの領域を離れて機能を活用する場合も、「コントロールでき透明性を確保している」(フェデリギ氏)と強調。今後は他の生成AIとの連携も広げていく。

生成AIはあらゆる情報を回答し、業務ソフトの効率を高める半面、AIの学習に個人情報が使われたり、著作権や肖像権の侵害につながったりするリスクもある。

AIの頭脳となる基盤技術のデータ学習について、ジャナンドレア氏は「できる限り質の高いデータを厳選し、使用許諾を得たニュース記事や写真などを使ってAIモデルに組み込んだ。モデルの微調整や、データを用いた訓練の多くはアップルが行っている」と説明した。

さらに「AIが悪い振る舞いをしないように注意深く設計した。徹底的に試験して慎重に訓練することにエネルギーを注いだ。責任ある形でAIを用いることに自信をもっている」とも述べた。

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