阪急阪神HDの定時株主総会には1700人超の株主が参加した(14日、大阪市北区)

阪急阪神ホールディングス(HD)は14日、大阪市内で定時株主総会を開催した。2023年9月に宝塚歌劇団の俳優(当時25)がパワハラを受けて死亡した問題について、議長を務める角和夫会長は「株主はじめ多くの皆様に心よりおわびする」と謝罪した。参加した株主からは、歌劇団問題を巡る企業統治(ガバナンス)不全に対し、株主利益の侵害や経営体制の長期化への批判も上がった。

午前10時に梅田芸術劇場(大阪市北区)で開会し、1731人の株主が参加した。

歌劇団側は俳優が亡くなった後、23年11月に公表した調査報告書で、上級生らによるパワハラを確認できなかったとしたことで遺族側が反発。西宮労働基準監督署の立ち入り調査などを経て、24年3月に14件のパワハラを認め、角会長らが謝罪した経緯がある。

招集通知では、パワハラ問題について「対処すべき課題」としたほか、「宝塚歌劇団に関する問題について」とする書面を同封。「伝統という言葉で現実に目を背けるのではなく、絶えず適切な形に変えていく」と体制改革に取り組むことを表明した。

招集通知に同封された「宝塚歌劇団に関する問題について」とする書面(14日、大阪市北区の総会会場で)

総会の冒頭、角会長をはじめ出席する役員全員が陳謝した後、嶋田泰夫社長は「スケジュール過密化や舞台の高度化が進む一方、現場の負担を軽減できる体制ができていなかった」と説明。興行計画や稽古スケジュールを見直し、劇団員の負担軽減を図るとしたほか、監査の強化などガバナンス整備を再発防止に向けて掲げた。

総会では株主から「ハラスメントの認識が観客や世間とずれている」「経営に女性の視点がない」という意見のほか、「5000円以上あった株価が4100円台まで下落し、株主利益を侵害している」「歌劇団が本拠地を置く宝塚市のイメージダウンにつながる」という批判も上がった。

角会長が03年に阪急電鉄の社長に就任して以来、20年以上経営トップに在任することへの批判に対し、角会長は「75歳として近々引退を考える。少なくとも来年までは今の体制で経営を行う」と発言した。

宝塚歌劇団が本拠を置く宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)

堺市の会社員、佐々木優子さん(48)は「企業の姿勢を問いただしに来た」と憤る。歌劇を年間120日観劇するファンとして、「これまでも不祥事があっても隠蔽する体質があった」と指摘する。東大阪市の58歳女性は「働き方改革を進める一方で、歌劇のクオリティー維持を劇団員個人に押しつけていないか」と疑問を呈した。

24年3月期の連結決算は純利益が678億円と前の期比で44%増えた一方、宝塚歌劇団の俳優が死亡した問題に伴う公演中止や物販の減少が響き、ステージ事業の営業利益は3割落ち込んだ。亡くなった俳優が所属していた宙組では、6月20日に9カ月ぶりに公演を再開する。10〜11月には全国ツアーも行うことを発表している。

阪神タイガースのファンとして株主になり、初めて参加した京都市の中川良輔さん(43)は「不幸な出来事があったからこそ、前向きな対応を見せて欲しい」と語った。

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