「二重価格」すでに導入の飲食店も
“金曜夜は地元客に” 「県民の日」
“2種類の料金設定あってもいいのでは”
「二重価格」に賛否の声
海外の観光名所では?
「料金差つけるなら“納得感”を」
「二重価格」法律上の問題は?
ことし4月にオープンした渋谷区の海鮮居酒屋は、客が自分で海産物を焼いて食べることが出来るお店です。店ではオープン当初から国内に住む客と、訪日した外国人観光客とで価格を分けています。例えば、飲み放題付きの食べ放題の価格は...
外国人観光客は平日のランチが6578円、平日のディナーが7678円ですが、国内に住む客(日本人と日本在住の外国人)はこの価格から1人あたり1100円値引きされます。「二重価格」になっていることは店舗の入り口のメニューにも貼り出して周知しているほか、インターネット予約の画面でも価格を分けて表示しています。
訪れていた日本人客「予約の段階で『日本在住者向け』の価格があることに気づきました。円安で外国人観光客が多く、外国人向けに設定されているような金額の店も多いですが、日本人が割り引きされるのはありがたいです」
店では「二重価格」を設定した理由について、日本語や焼き方がわからない訪日客に対しては、スタッフが英語でつきっきりで説明するなど、国内の客よりも接客コストがかかることを挙げています。
一方、接客コストが相対的に低い、国内客の価格を割り引くことでお得感を感じてもらうことで、オープンから2か月の現在はおよそ15パーセントから20パーセントが外国人観光客、残りが国内の客になっています。また、対象者の確認方法については「日本語ができるかどうか」としていますが、日本語が話せなくても在留カードを確認するなどして「在日外国人」と判断できれば割り引きを受けられるようにしているということです。
オーナーの米満尚悟さん「外国人観光客の金額を上げるのではなく、国内在住者を割り引く形にしたことで、理解を得やすくなっていると思います。これまでのところ日本人客は好意的で、実際に入店する外国人も二重価格とわかって来ているので、特に大きなトラブルはありません」
「二重価格」とは別の方法で、訪日客と地元客を分ける取り組みを始めた店もあります。広島市のお好み焼き店ではコロナ禍以降、外国人の客が徐々に増えました。さらに円安の影響や観光地に近い立地から、現在は客の8割以上が外国人観光客という状況です。一方で、地元の常連客がなかなか店に入れなくなっていました。少しでも、元のように常連客が入れるようにするにはどうすればいいのか。
検討の結果、ことし4月から毎週金曜夜を「県民の日」に設定、毎週その日だけは地元客や過去に店を訪れた人がある人に限定した受け入れを始めました。
お好み焼き店のオーナー「店はもともとは観光客向けの店ではなく、地元密着で地元の人たちとコミュニケーションを楽しむ店でした。インバウンドはいつまでも続くものではなく、今がバブルの状態だと思っています」
「県民の日」以外は、来店した外国人客に対してもできる限りのことはしています。必ず『どこから来たか』を聞いて、その国の言語であいさつするなど努力をしているということです。それでも、これまで支えてくれた地元の客をないがしろにすることはできないと考えています。
「批判を受けても『県民の日』は続けるつもりです」
こうした中、世界遺産の姫路城が注目を集めています。別名「白鷺城」とも呼ばれ、その美しさで知られる姫路城は、外国人観光客にも人気で、昨年度訪れた約148万人のうち3割余りは外国人と推計されています。
その入城料金が、議論を呼んでいます。現在の料金は、18歳以上で一律1000円と設定しています。姫路市の清元市長は17日夜、海外の事例も参考にしながら外国人観光客と市民などとの間で差をつけることも含め、見直しを検討していく考えを示しました。理由について清元市長は、文化財として保護していくために費用が見込まれるためだとしています。見込まれる費用について具体的に次のようなものを挙げ、経費について調査を行うということです。▽修理に必要な資材の確保▽職人の技術を継承する人材育成▽耐震性強化
姫路市 清元市長「もうけようということではない。ただ、持続可能性のある世界遺産を維持する経費を算出するために、少なくとも子どもや高齢者、教育目的の人たちと、ピュアな観光目的の人との間に多少、料金の差をつけてもいいのではないか。市民と外国から訪れる人と2種類の料金設定があっていいのではないか」
姫路城の入城料金をめぐるニュースを受けて、X(旧ツイッター)には、料金の差を設けることへ賛否さまざまな意見が投稿されています。「問題ない」という声は、次のようなものがあります。
「日本の価格が安くてきている外国人もいるのだから外国人の料金はもっと高くしてもいいと思う」「住んでいる市民だけ安くなるといったサービスはすでにいろんなところでやっているので問題はないと思う」
一方で、懸念する声も。
「料金の差が大きければお客さんが減ってしまうので加減が大事」「差別にならないんでしょうか」「外国人を相手にした方がもうかるという構造が生まれてしまう」
旅行者が観光地などに集中するオーバーツーリズムが問題視される中、海外では観光客から特別な料金を徴収する取り組みが行われています。こうした取り組みには主に「観光税」と、外国人に特別な料金を課す「二重価格」があります。
以下、「観光税」の例です。ヨーロッパを代表する観光都市のスペインのバルセロナでは、ホテルなどに滞在する観光客を対象に、宿泊料金に1泊あたり3.25ユーロ、日本円で約550円が加算されるようになっています。インドネシアのバリ島でも、美しいビーチや寺院などを保護し観光サービスの財源にしようと、ことし2月に観光税が導入されました。外国人観光客は専用のウェブサイトや空港に設けられたカウンターで15万ルピア、日本円で約1400円を支払います。一方、ヒマラヤの王国ブータンでは、旅行者の増加を抑えながら外貨も獲得しようと、政府はおととし、1日65ドルだった観光税を200ドルに大幅に引き上げました。しかし、去年の観光客数が新型コロナのパンデミック前の3分の1にとどまったことから、半額の100ドルに引き下げました。(※1ルピア=0.0096円、1ユーロ=169円で計算)
地元の市民と外国人観光客などとの間で観光施設の利用料金に差をつける「二重価格」も、各地で定着しています。このうちエジプト最大の観光名所、ギザのピラミッドの見学料は、地元やアラブ諸国の観光客が日本円で約200円であるのに対し、他の外国人観光客は9倍にあたる約1800円に設定されています。また南米ペルーの世界遺産、マチュピチュの入場料は、ペルーと近隣国の観光客が31ドル、日本円で約4900円であるのに対し、他の外国人観光客は62ドル、約9700円となっています。(※1ドル=157円で計算)
姫路城のような観光名所で外国人観光客と市民などとの間で料金に差を設けることについて、観光政策に詳しい城西国際大学観光学部の佐滝剛弘教授は次のように指摘しています。
城西国際大学観光学部 佐滝剛弘教授「海外の発展途上国では外貨獲得のために“二重料金”として外国人との間に料金の差を設ているところもあるが、日本のような先進国ではあまり例がない。国籍を理由に料金に差があることが公平ではないという意見もある。日本は観光立国を掲げ、外国人の受け入れを積極的に進めている中で、インバウンドの動向に影響が出ることはないか、慎重な議論が必要だ」
一方で佐滝教授は、外国人観光客の増加に伴ってこうした動きは今後も広がっていく可能性があるとしたうえで、こう話していました。
「どのように外国人かどうかを見分けていくかや、日本に定住している外国人はどうなるかなど検討すべき課題は少なくない。料金に差を設けるのであれば、なぜ違いがあるのかを丁寧に説明していく必要がある。外国人だから高くというだけではなく外国人向けのサービスを充実させるとか付加価値をつけるなどして納得感のある仕組みにしていかないと受け入れられないのではないか」
そもそも同じ商品やサービスについて、外国人観光客と地元の市民で異なる料金をつけることは法律上、問題はないのでしょうか。消費者庁の担当部署に聞いてみました。結論としては「問題ない」ということでした。すこし別の話になりますが、たとえば、定価1万円の商品を5000円で販売すると表示して、実は1万円というのはまったくうその料金で、あたかも安くしているように見せかけているケースなどは景品表示法が規制する「不当表示」にあたります。ただ、外国人と地元の市民とで異なる料金を表示していた場合については、相手に応じて料金を変えているだけで、価格の表示が適性に行われていないというわけではないので、問題はないということです。
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