アルバイトの仲介アプリを手掛けるスタートアップのタイミー(東京・港)は21日、東京証券取引所への上場が承認されたと発表した。隙間時間を活用して働くスポットワーク市場の成長をけん引してきた先駆者だ。一方、足元ではメルカリなどの参入が相次ぎ、競争が激しくなっている。企業や働き手が安心して利用できる環境の整備も課題となる。
上場予定日は7月26日〜8月1日で、グロース市場に上場する。時価総額は最大1360億円を見込む。創業10年以内のスタートアップで時価総額(公開価格ベース)が1000億円を上回るのは、2021年9月に上場したクラウド監視カメラシステムのセーフィー以来となる。スタートアップ業界にとっては明るいニュースだ。
23年10月期の単独売上高は161億円、純利益は18億円だった。これまでの資金調達や事業の好調を受け、今回の上場では新株を発行せず、新たな資金調達は実施しない。サイバーエージェントなどの既存株主が株式を売り出し、利益を確定する。
タイミーは17年に立教大学の学生だった小川嶺社長が前身となる企業を創業し、18年にスポットワーク仲介のサービスを始めた。利用者は履歴書などを提出する手間が必要なく、数時間単位の求人に手軽に応募できる。求人を出す企業は雇用契約の電子化や給与の立て替えなどのサービスで労務作業を削減できる。
タイミーに出資している香港の投資ファンド、キーロック・キャピタル・マネジメントの内河俊輔シニアアドバイザーは「仕事が終わった後に、企業と働き手が相互に評価する仕組みを導入し、サービスの品質を高めている」と評価する。
新型コロナウイルス禍では飲食店の求人減少で売上高が激減したが、物流やホテル、介護など他の業界の需要を取り込み、業績を回復させた。24年4月時点で登録者数は770万人、導入事業所数は25万4千拠点まで拡大した。
スポットワーク協会(東京・千代田)によると、5月末時点でタイミーなど大手4社の登録者を合計したスポットワーカーの数は前年同月比6割増の1700万人となった。人手不足に加え、副業の解禁など働き方の多様化が背景にある。
一方、スポットワーク仲介では新規参入も相次ぐ。メルカリは3月に「メルカリ ハロ」を始め、開始から3カ月で登録者数が500万人を超えた。リクルートも今秋にスポットワークに特化した求人サイト「タウンワークスキマ」(仮称)を立ち上げる予定だ。
こうした大手が自社の既存事業の決済機能や労務管理などとの相乗効果を狙うなか、先行するタイミーも周辺サービスの拡充などを求められそうだ。
仲介サービスの増加による新たな課題も浮上している。働き手が複数の仲介アプリで仕事を請け負うことによる社会保険料などの問題だ。例えばタイミーでは、同じ求人企業で1人の働き手の月額賃金が社会保険の加入義務が発生する8万8000円以上にならないようブロックする機能を設け、利便性を高めている。
ただ、働き手が複数の仲介サービスを利用してこの金額以上を稼いだ場合、社会保険の加入対象になっているにもかかわらず企業側が把握できず、法令違反となる可能性もある。こうしたトラブルを業界全体で解決する仕組みづくりなども今後は求められる。
スポットワーク仲介の先駆者として新たな課題に率先して向き合い、名実ともに業界をリードし続けられるか。上場を契機にタイミーの真価が問われる。
(小山美海、鈴木健二朗)
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