半導体大手の米エヌビディアが先週、株式時価総額で米マイクロソフトを抜き、初めて世界首位に立った。背景には生成AI(人工知能)が急速に発達して次の主戦場となるIT業界の構造転換があり、日本企業も対応を急ぎたい。
エヌビディアは1993年、ゲーム機などに使う画像処理半導体(GPU)の開発企業として発足した。米インテルなどの陰に隠れた比較的ニッチな企業だったが、GPUの構造がAIの開発に適していると分かり、注目を浴びた経緯がある。
米オープンAIがエヌビディアのGPUを多用して対話AI「Chat(チャット)GPT」を開発すると、グーグルなどの米IT大手も対抗して同じGPUを導入し、奪い合いの状況になった。
この結果、エヌビディアの2024年1月期の売上高は前の期比2.3倍に増えた。時価総額も1年あまりで3倍に増え、首位となった18日は約3兆3350億ドル(約530兆円)に膨らんだ。日本企業で時価総額が最も大きいトヨタ自動車のほぼ10倍の水準だ。
エヌビディアの「一人勝ち」の状況は当面続くとの見方が有力だが、顧客であるIT大手が同社への依存を中長期的に引き下げようとしていることには注意が要る。各社はエヌビディアの競合企業からの調達に動き、AIの開発や利用に特化した半導体の自社開発も進めている。
コストを下げて生成AIの用途を広げつつ、課題である電力消費を抑える狙いだ。こうした動きからは日本企業も学ぶ点がある。
たとえば用途の拡大だ。日本企業にとって重要になるのは、生成AIで付加価値や生産性を高められる分野を見つけることだ。少子高齢化が進むなか、自動運転やロボットといった省人化を見込める技術は有力な応用先といえる。
省エネ技術も重要になる。先端半導体の国内生産を目指すラピダスは省電力を売り物にしている。NTTなどは光で情報を処理する新技術「光電融合」をエネルギー消費抑制の切り札と位置づけており、実用化に期待したい。
また、製造装置や部素材といった日本企業が既に高い世界シェアを握る領域で、こうした課題の解決を通じて存在感を高める取り組みも欠かせない。経済安全保障の観点からも半導体のサプライチェーン(供給網)の要所を握ることは一段と重要になっている。
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