米イーライ・リリーの肥満症治療薬「ゼプバウンド」=ロイター

【ニューヨーク=西邨紘子】米製薬大手のイーライ・リリーは17日、肥満症治療薬「ゼプバウンド」(一般名チルゼパチド)について、睡眠中に起こる呼吸障害の軽減に有効なことを後期臨床試験(治験)で確認したと発表した。肥満している人に起こりやすく、投薬による減量効果で症状の改善につながった可能性がある。

治験では、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)で中程度から重度の症状がある肥満成人にゼプバウンド(10ミリグラムまたは15ミリグラム)を投与した。52週間にわたりOSAの症状の変化を調べ、偽薬を投与した場合と比較した。

治験はOSAの治療で気道陽圧(PAP)療法を受けている患者と、受けていない患者に分け、2種類を進めた。米国、日本を含む9カ国から469人が参加した。

その結果、両方の治験で、ゼプバウンドの投与を受けたグループに呼吸障害の症状改善が見られた。1時間あたりの呼吸障害(気流の制限もしくは気道閉塞)の発生回数は、PAP療法を受けていないグループで55%、受けている患者では62.8%減少した。

またゼプバウンドの投与を受けたグループでは、体重が平均で18~20%減少した。主な副作用は下痢や吐き気だった。

偽薬を投与したグループでは、呼吸障害の発生回数の減少率はそれぞれ1割以下、体重の減少は数%だった。

OSAは睡眠中に何度も呼吸が止まる呼吸障害だ。睡眠の質が悪化するため、日中に疲労や過度の眠気などの症状が起こる。また、血中の酸素が不足することで、脳卒中や高血圧、心臓疾患など深刻な病気へのリスクも高まる。

イーライ・リリーによると、米国のOSA患者数は約8000万人にのぼる。そのうち2000万人が中程度から重度の症状を抱える。肥満している人がかかりやすいとされ、減量により症状が改善する例が報告されている。

米国立衛生研究所(NIH)によると、米国では成人の肥満率が4割を超えている。

ゼプバウンドは2023年11月、肥満症の治療薬として初めて米食品医薬品局(FDA)から認可を受けた。もともと糖尿病の治療薬として開発された薬で、血糖値を下げる働きがある。米国では「マンジャロ」の商品名で2型糖尿病の治療薬としても販売されている。

減量効果に注目が集まり需要が急拡大したことで、供給不足や不適切な利用の問題も報告される。FDAは1月、イーライ・リリーやデンマークのノボノルディスクの肥満症薬について、患者から報告があった脱毛や誤嚥(ごえん)、自殺を考えてしまうなどの副作用について調査を進めていると明らかにした。

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