22年秋からの協業効果を公表するニップンの前鶴社長㊧と刀の森岡CEO(東京都中央区)

ニップンとマーケティング会社の刀(大阪市)はこのほど、2022年秋からの協業の成果についてまとめた。家庭用製品の販売拡大を狙ってパスタ事業のマーケティングを見直し、冷凍パスタと乾燥パスタの売上高がそれぞれ2割伸びた。協業は26年3月期まで続け、ニップンの前鶴俊哉社長は「今後は協業で得たノウハウを業務用製品にも生かしたい」と話す。

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両社が協業を始めたのは22年秋ごろ。ニップンが消費者の声や購買行動の分析などを通じて市場のニーズを把握する力を高め、これまで業務用が中心だった食品事業で家庭用製品の売り上げを拡大するため刀と組んだ。

まず取り組んだのが、業務用や家庭用など部署を横断して市場分析や商品開発などのマーケティングを専門で担う「マーケティング推進室(現マーケティング推進部)」の新設だ。ニップンにはそれまでマーケティングの専門部署がなく、各部署が必要に応じて市場の分析などをしていた。

このため「部署間の情報共有や消費者の具体的な需要の分析が不十分だった」と同部の石倉あすみさんは話す。専門部署ができたことで商品開発や営業など社内での連携がスムーズになり、これまでは無かった視点からの意見も出るようになったという。

マーケティングのノウハウは刀が提供した。消費者の自宅を訪問して聞き取りをしたり、インターネットを使った大規模調査を行ったりして、消費者が今、何を求めているのか、ニップンの製品の強みは何かといったことなどを分析した。

こうした取り組みを商品開発に生かしていった。例えば、冷凍パスタ「オーマイプレミアム」は24年3月に全商品のパッケージを刷新した。「冷凍パスタでは利便性よりもおいしさを求めている層が多い」という調査結果を踏まえ、パッケージの文字を減らして立体的に配置した具材など商品の写真を大きく見せるようにした。

文字を減らし、具材など料理の写真が目立つようにパッケージを変更した(上が新包装)

併せて「海の幸の醬油バター」など人気の3商品は具材を大きくしたり、ソースを増量するなど味も変更した。協業で得たマーケティングノウハウを商品に生かし始めた23年10月から24年5月のオーマイプレミアムの売上高は前年同期比20%増となった。

新商品も生まれた。24年2月に発売した乾燥パスタ「オーマイプレミアム もちっとおいしいスパゲッティ」は着想から販売までに通常の2倍の時間をかけて、日本人が好むもちっとした食感にした。パッケージデザインも商品の食感を前面に押し出し、味の印象がより伝わるようにした。

同商品は発売から2カ月で1000万食以上を売り上げ、ニップンがこれまで発売した家庭用パスタで最も売れた。ニップンの乾燥ロングパスタ全体の売上高が3〜5月に前年同期比16%伸びる原動力となった。

前鶴社長は「協業によって、必要としていた消費者を理解するための力が社内に浸透した。成熟市場に変化を起こすことに手応えを感じている」と話し、「業務用製品にもノウハウを生かしていきたい」と意気込んだ。刀の森岡毅最高経営責任者(CEO)は「刀のマーケティング力とニップンの技術力が合わされば国内だけではなく海外でも競争ができる」と述べた。

刀との協業は26年3月期まで続ける予定だ。マーケティングノウハウをニップンに浸透させ、冷凍パスタと乾燥パスタのオーマイプレミアムブランドの売上高を25年3月期に前期比1.3倍にあたる120億円に引き上げたいという。

ニップンは27年3月期までに連結売上高を24年3月期比12%増の4500億円、営業利益を3%増の210億円に引き上げる計画を立てており、目標達成に向けて今後もマーケティングに力を入れていく方針だ。

(西頭宣明)

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