トマト1個40円、キュウリ1本25円、リンゴ1個95円、スイカ1玉(Lサイズ)1080円――。店頭には格安野菜がずらりと並ぶ。こうした規格外品や余剰在庫などの「ワケあり」の野菜や果物などの食品を格安販売するのは、愛知県内で3店舗を展開するスーパー「ベジブル」だ。連日正午ごろに各店舗で大半が売り切れるという盛況ぶりで、3店舗目は5月にオープンしたばかり。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだが、運営会社社長の堀内塁さん(44)は「安く仕入れて安く売る正直商売を貫く」と浮かれたところはない。
フードロス削減を掲げ、2020年5月に堀内さんがみよし市に初出店した。
堀内さん、元々はたこ焼き店主
もともとたこ焼き店を営んでいたが、コロナ禍で低迷。手作りマスクをおまけにしたことで一時持ち直したものの、先行きが不安な中で「人の生活により密着した商売をしよう」と模索していた。そんなさなか、国の緊急事態宣言で学校が突然休校になり、給食の食材が大量廃棄されたというニュースを見て「もったいない」という思いに駆られた。
この二つの思いをかけ合わせたのが、廃棄が迫る食べ物を安く売るビジネスだ。
東海地方を中心とする農家や食品加工会社、商社100社以上のほか、家庭菜園をしている一般家庭約150軒から、傷がある収穫物、賞味期限間近、シーズンを過ぎたものなどを仕入れ、通常の2~7割程度で販売している。
1店舗目から仕入れ、販売とも順調で、22年1月に同名の運営会社を小牧市に設立。1店だけで商品を売りきれなくなり、同年9月に小牧店、今年5月に水草団地店(名古屋市北区)をオープンした。
いずれも朝10時の開店直後から駐車場は満車状態で、店内は近隣住民らでにぎわう。最近の物価高も影響し、格安食品が飛ぶように売れていく。
受け継いだ祖父の「正直商売」
そんな堀内さんが大事にしている心がけが、「正直商売」。自身と同じく「もったいない」をビジネスにした祖父故・櫟木(いちのき)久助さんから受け継いだ。櫟木さんは生前、愛知に大型リサイクル店4カ所を展開する「キンブル」(名古屋市昭和区)を創業。櫟木さんは、ある客から買い取った骨董(こっとう)品が、想定より高値で売れたとき、もうけの全額を懐にしまうのではなく、元の客に返金したという。
「祖父は真面目にコツコツ働き、『正直商売』を貫いた人だった」と堀内さん。自身も同じように、食品が想定より高値で売れた際、場合によっては仕入れ先に返金する。祖父のように、多くの人に支えられ、求められる息の長いビジネスをしていくことが目標だ。「物価高などで、ワケあり品でも食料品を必要とする人々が最近特に多い。世の中に余っているものを、必要という人々に少しでも多く届けたい」と力を込めた。【大原翔】
「ベジブル」とは
2022年1月設立。本社は愛知県小牧市。従業員数は50人。ベジブルの事業はフードロス対策という課題を抱える企業との親和性が高い。そのため、23年4月、中部圏の大企業も多数属する中部経済連合会に加盟。大企業との接点を積極的に作り、徐々に引き合いが増えてきているという。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。