ビールに関心がない若者をターゲットにした新ブランド「WITH BEER」を新たに発売する

サッポロビールはビールに関心がない若者をターゲットにした新ブランド「WITH BEER(ウィズビアー)」を発売した。現役大学生へのインタビューから商品コンセプトを探り、若手社員らが約1年かけて開発した。国内のビール系飲料市場が縮小するなか、若者の潜在ニーズにアプローチして新たな市場開拓を狙う。

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「WITH BEER ホワイトエール」を25日から数量限定で発売した。原料には一般的に苦みが少ないとされる小麦麦芽を一部使用。オレンジピールとコリアンダーシードを隠し味に使ってフルーティーな味わいにした。アルコール度数は4.5%で、350ミリリットルのコンビニエンスストアでの想定価格は主力の「黒ラベル」と同じ225円前後だ。

「ビールは頑張って飲めるようにならないといけないお酒」。開発に先立ちインタビューした学生からはこんな声があった。浮き彫りになったのはビール特有の苦みに対する苦手意識だ。顧客体験デザイン部長の坂下聡一氏は「ビールは飲み慣れるまでに訓練しなければいけないイメージがある」という。

WITH BEERは現役大学生との対話から商品コンセプトを探った

開発には若手社員6人を選抜した。マーケティング部のほか営業部や人事部もメンバーに入れた。月に1〜2回集まって中身やパッケージ案を出し合った。味にはホワイトエールを選定し「我慢しなくても飲んだ瞬間からおいしく感じられる」(坂下部長)。パッケージのベースカラー「リニューブルー」は、思わず手に取りたくなる色味として選んだという。

若年層の飲酒行動は変化している。居酒屋に行けば「とりあえずビール」だった時代は今は昔。1杯目からチューハイなどを注文する人が増えている。ただ、サッポロビールが20代を対象にしたビールに対するイメージ調査では「社会人として飲めた方が得」「コミュニケーションツールの一つ」との意見もあった。

消費者に寄り添った商品開発ができていなかったのではないか――。サッポロビールは2024年春から組織体制も変えた。商品開発に特化した「新価値開発部」を解体し、新たに坂下氏が部長を務める「顧客体験デザイン部」を設けた。商品開発から販促プランを考えるマーケティングまでの機能を一貫して実行する体制にした。

坂下氏は「サッポロには顧客理解、(未来の顧客ニーズを捉える)未来志向、イノベーションの3つに課題があった。イノベーションとは顧客の課題を新しい切り口で解決すること。(消費者の)潜在的な悩みや願望を徹底的に見つけていく必要がある」と意気込む。

年初の事業方針説明会でマーケティング本部長の武内亮人氏は「ビールに対する憧れを創り出す」と述べた。国内20〜70代の9000万人のうち、飲酒人口が7500万人いると推計。そのなかでビールに関心を持つ層が2500万人、無関心層が5000万人いると仮定した。WITH BEERは無関心層の開拓に向けた第1弾商品で、第2弾以降も視野に入れる。売り上げ目標は非開示。

6月にはアーティストのNovelbright(ノーベルブライト)とコラボレーションした楽曲の配信が始まった。日常の何気ない時間の大事さを感じさせるミュージックビデオの中にWITH BEERを登場させるなど、特に20代前半のビール無関心層に訴求する。

ビール系飲料市場は縮小傾向のなか、減税の恩恵もあり狭義のビールには追い風が吹く。今こそビールの価値を再評価してもらい、将来のサッポロファンに育てたい考えだ。

(八木悠介)

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