トップバリュの傘(右)は一般的な傘より大きくして雨の日でも使いやすくした

猛暑が今年も近づいているなか、日差しや暑さを防ぐために日傘をさす男性が増えている。雨でも晴れでも使える「晴雨兼用傘」が人気を支え、若者から中高年まで幅広い世代での利用が進み、もはや男性が日傘をさすことは珍しくなくなりつつある。イオンではプライベートブランド(PB)の「トップバリュ」から男性用日傘の販売も始めている。

イオン、前年の1・5倍の売れ行き

千葉県在住の会社員男性(56)は暑い日の外出に日傘は手放せないという。「昔はそこまで暑くなく日傘を使うなんて考えたことも無かった。けれど最近の暑さは耐えられない。何とか対策しようと思って日傘にたどり着いた」と話す。「自分の体と頭皮を守ってくれるのでとても重宝している」という。

「40〜50代の方が購入のボリュームゾーン」と話すのはイオンリテールで傘の仕入れを担当する室橋佑太マーチャンダイザーだ。イオンでは2019年から男性用日傘の売り場を設けている。今年の男性用日傘の売り上げ(3〜5月)は前年同期比で1.5倍に増えた。売り場を設け始めた19年同期比では約7倍となっている。

イオンは23年、PBトップバリュから男性用日傘を発売した。「晴れの日でも雨の日でも使いたい」というニーズに応えるため、親骨の長さを一般的な日傘のサイズより5センチほど大きい60センチにした。紫外線(UV)を遮蔽する機能を盛りこみつつ、雨の日に使っても荷物がぬれにくいという。

これまで男性用の傘は黒色や紺色の傘が売れ筋だった。足元では日傘としての利用機会が増えたことで、より涼しげな印象がある白色の売り上げが増えている。トップバリュでも今年から白色の晴雨兼用傘の販売を始め、黒・紺・シルバー・白の4色を展開している。

3本使い分け

若い世代では日傘をさすことは当たり前になりつつある。東京都在住の会社員男性(25)は「暑さ対策と紫外線対策のために日傘を使うようになった。日傘をさすことに対して恥ずかしさなどの抵抗は特に無かった」と話す。「今では雨の日用の長傘と雨に備えるための折り畳み傘、日傘用の折り畳み傘の3本を使い分けている」という。

ロフトでは晴雨兼用傘の売り場面積がコロナ前と比べて2倍になった

「最近は『男性用の日傘』として訴求しなくても買ってもらえるようになってきた」。雑貨店のロフトで傘のバイヤー、酒井麻沙氏はこう話す。ロフトでは紫外線対策を求めて日傘を購入する人や持ち運びやすさを重視して軽いものを選ぶ人、ボタンで開閉する機能などがついたものを選ぶ人など、様々な特徴を持った日傘を男性が買いに来るという。

ロフトでも男性用日傘の3〜5月の売り上げが前年比で1.5倍に増加した。同社が男性用の日傘の販促を始めた18年ごろは、父の日などのギフト用に売り出しており、女性が購入するケースが多かった。しかし、近年の猛暑がきっかけとなり、今では男性が自分で使うために傘を購入するケースが大半だ。

今後も日傘の活躍機会は増えそうだ。23年夏の平均気温は平年を1.76度上回った。1898年の統計開始以降で最も高い値となり、各地で熱中症の被害が生じた。気象庁の3カ月予報によると、2024年6〜8月も平年より気温が高く、23年並みの猛暑となることが予想されている。

日傘は頭部に当たる直射日光を大きく減らしてくれる。民間気象会社のウェザーニューズによると、真夏の昼下がりに日差しが当たった頭髪の温度は55度前後まで上昇するが、日傘を使えば40度前後まで温度を抑えられるという。

これまで男性用の日傘は市場規模が小さく、機能やデザインの違いはあまりなかった。しかし、猛暑を理由に幅広い世代で利用が増え、メーカーは製品開発を急ぐ。親骨の長さを長傘と同程度にした折り畳み傘や、重さが100グラム以下と軽いもの、スマートフォンなど小物が入る機能を付けたものなど、需要に応える製品が増えつつある。夏本番が訪れる前に晴雨兼用傘を探してみるのも良いのではないか。

(西頭宣明)

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