第二東京弁護士会が運営する相談窓口「フリーランス・トラブル110番」には開設から3年半ほどで、累計2万件以上の相談が寄せられている。相談者が最も多い業種は軽貨物ドライバーを含む「運送」で、全体の15・3%を占める。事務責任者の山田康成弁護士によると、「やめたいと申し出ても、実はなかなかやめさせてもらえない」という実態があるという。
政府の統計や試算によると、日本では260万~460万人がフリーランスとして働いたり、その「予備軍」とも言える副業をしたりしているが、就業者人口に占める割合は数%程度。「約4割」とも言われる米国に比べると、まだまだ少ないが、トラブルは急増している。
厚生労働省からの委託で、第二東京弁護士会が2020年11月に開設した「フリーランス・トラブル110番」には、社員であれば労使折半で負担する社会保険料を浮かせるために、企業が業務委託の仕組みを使う事例の相談が後を絶たない。
山田弁護士が驚いたのは「フリーランスが仕事をやめたいと申し出ても、実はなかなかやめさせてもらえない」という実態だ。
軽貨物ドライバーの中には、契約解除する際には3カ月前に申し出ること、状況によっては違約金や賠償金を支払うことを盛り込んだ契約書に同意しているケースが少なくない。すぐやめたくても「3カ月は働くほかない」と泣き寝入りする事例もあるという。
今年11月には、報酬額や支払期日といった取引条件の明示などを義務づけるフリーランス新法が施行される。違反行為に対しては公正取引委員会や中小企業庁、厚生労働省による指導や立ち入り検査、勧告、命令などが行われ、50万円以下の罰金を科される場合もある。しかし、山田弁護士は「新法はないよりはあった方がいいという程度」とみる。
トラブルは主に、業界の末端にいて経営の苦しい下請け業者とフリーランスの間で起こっている。深刻な人手不足の中で「下請けも生き残りを懸けているから、人件費を減らすためにフリーランスにしわを寄せる。新法が施行されても、そうした業者の実務が変わるとは思えない」と懸念する。【中島昭浩】
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