日銀は3日、20年ぶりとなる新しい紙幣の発行を始めた。新紙幣の肖像は、1万円札が「近代日本資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一、5千円札が女子英学塾(現津田塾大学)創立者の津田梅子、千円札が「近代日本医学の父」と言われる北里柴三郎。キャッシュレス化が進む中で新紙幣が登場する初のケースとなった。
日銀は3日、東京・日本橋本石町の本店と全国の32支店で金融機関専用窓口を通常より1時間早い午前8時に開け、金融機関への払い出しをスタート。同日中に1.6兆円分の新紙幣を金融機関に引き渡す。準備の整った金融機関の窓口やATMで順次新紙幣を入手できるようになる。
日銀本店では発行開始に先立ち、植田和男総裁が「国民の皆さまのお手元に広く行き渡り、わが国経済を支える潤滑油となることを期待する」とあいさつ。「キャッシュレス化が進展しているが、現金は誰でも、いつでも、どこでも安心して使える決済手段で、今後とも大きな役割を果たしていく」と強調した。
その後、金沢敏郎発券局長が「新しい日本銀行券の発行を開始してください」と合図。植田総裁らが見守る中、40万枚ごとにまとめられた新紙幣のブロックが金融機関に引き渡され、現金輸送車に次々と積み込まれた。
新紙幣は国立印刷局で製造。傾けると肖像が立体的に動いて見える3次元(3D)ホログラムなど、世界初の偽造防止技術を採用した。日銀は6月末時点で1万円札を約29億枚、5千円札を約3億枚、千円札を約20億枚、備蓄している。
これまでに発行した福沢諭吉の1万円札、樋口一葉の5千円札、野口英世の千円札も引き続き使用できる。財務省と日銀は「従来の日本銀行券が使えなくなるとかたる詐欺に注意してほしい」と呼び掛けている。
新紙幣の発行開始に際し、あいさつする日銀の植田和男総裁=3日午前、東京都中央区の日銀本店(代表撮影)
新紙幣の発行が始まり、引き渡し状況を視察する日銀の植田和男総裁(奥左から2人目)ら=3日午前、東京都中央区の日銀本店(代表撮影)
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