公正取引委員会は5日、トヨタ自動車子会社で救急車など「特装車」の生産を手がけるトヨタカスタマイジング&ディベロップメント(TCD、横浜市)に対し、下請法違反行為があったとして再発防止を勧告した。下請け企業に金型を無償保管させたほか、不当な返品もあった。下請けが被った損失の補塡を求めた。
公取委によると、TCDは遅くとも2022年7月以降、長期間発注を行う予定がないにもかかわらず、下請け企業49社に合計664個の金型や検査用器具などを無償で保管させていた。費用の算定は終わっていないが、数千万円に上る可能性がある。
また22年7月〜24年3月、下請け企業がバンパーなど車体パーツを納品する際、品質検査をせずに返品していたことも判明した。不当な返品を受けた下請けは65社で、TCDは被害額の計5427万円を各社に支払った。
2種の違反行為の被害企業は一部重複しており、TCDによる補塡対象は計94社になる。
下請法は優位な立場を利用した親事業者の不当行為を規制している。下請け企業に対する金銭・サービスの提供の強制や、下請けに責任がない返品は違反になる。違反行為による被害が大きければ勧告が出され、事業者名が公表される。
公取委は近年、下請けいじめの是正に積極的に動いている。光熱費や原材料の価格が上昇する一方、立場の弱い下請け企業はコスト上昇分を価格に転嫁しづらいとされる。中小企業の賃上げを阻害しないためにも、適正な価格転嫁を促す狙いがある。
公取委による下請法違反の指導・勧告は22年度に8671件に上り過去最多だった。23年度も8281件と高い水準で推移している。下請け企業に金型を無償で保管させる事案への処分が目立っている。
自動車業界では日産自動車が24年3月に下請法違反の勧告を受けた。公取委は同社が下請け企業36社への支払代金約30億2300万円を不当に減額したと認定した。
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