販売業者から送られてきた「ギフト券」=東京都千代田区で7月3日、嶋田夕子撮影

 書き込んだ高評価の口コミが違法行為の片棒を担ぐことになりかねない――。インターネット通販サイトの利用者向けに、販売業者が高評価の口コミと引き換えに報酬の提供を持ちかけるケースが確認されている。国民生活センターは「ステルスマーケティング(ステマ)にあたる危険性がある」と注意喚起している。

 記者は6月、ネット通販サイトで約2000円の雑貨を購入した。商品と一緒に販売業者から届いたのは、サイトの口コミ欄に最高評価を書き込めば、1500円分のギフト券を受け取れるという案内だった。その案内には「レビューでギフト券を書かないようお願いします」とややたどたどしい日本語で口外を禁じる記載もあった。

 該当商品の口コミを見ると、写真や動画を付けて投稿している人が散見された。最高5点の評価で平均4・8点とかなり高く、同じような商品が並ぶ中、部門の売り上げは3位だった。

 問題はないのかと疑問に思い販売業者に連絡したが、返事はない。そのため、国民生活センターに聞くとステマの可能性を指摘された。

 ステマとは広告主が広告であることを明らかにせず、一般の書き込みを装って宣伝する行為をいう。2012年には、芸能人が報酬を受け取ってネットオークションサイト「ペニーオークション」に関する虚偽の書き込みを自身のブログにし、一般人が入札手数料をだまし取られる事件が発生するなど、ネット交流サービス(SNS)の普及に伴い、社会問題化していた。

 消費者庁は23年10月、ステマについて「消費者の自主的かつ合理的な商品・サービス選択を阻害する恐れがある」として景品表示法で禁じた。今年6月には、グーグルマップの口コミで高評価をする見返りとしてワクチン接種料金を割り引くと依頼し、口コミを偽装したとして、東京都内の医療機関に措置命令を出した。事業所名を公開し、改善や再発防止策を求めた初の行政処分となった。

 現行の景品表示法では行政措置の対象は広告主のみで、企業から広告・宣伝の依頼を受けたインフルエンサーや消費者ら第三者には及ばない。だが、国民生活センターの担当者は「サイトの規約でステマを禁止しているところもある。企業の誘いに乗って評価をすると、消費者自身もアカウント停止となるケースもある」と指摘。「口コミは商品を購入する際の大切な判断基準。正当に評価をしてほしい」と呼びかけている。【嶋田夕子】

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