安価な鉄で車体部品を一体成型する技術を導入する(ジーテクトの試作イメージ)

ホンダ系部品大手のジーテクトは19日、世界鉄鋼2位の欧州アルセロール・ミタルと技術供与の契約を結んだと発表した。安価な鉄で車体部品を一体成型し、電気自動車(EV)の部品数を減らす生産方式を導入する。2028年に量産車で採用することを目指す。

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ミタルが持つ特殊なレーザーの加工技術を部材生産に導入する。素材を加熱した後にプレス成形し、高強度の骨格部品をつくる。不純物が混じらないようにするミタルの接合技術を生かすことで、5〜10程度の部品をまとめて1つにできる。

部品が減ることは生産設備の削減にもつながる。EVだけでなく燃料電池車(FCV)やプラグインハイブリッド車(PHV) などの電動車でも応用できる技術だ。専用鋼板をつくる日本製鉄と連携し、プレス加工の量産化技術を開発する。

EVでは車体部品をアルミ鋳造で一体成型する「ギガキャスト」と呼ばれる手法をテスラや中国勢が導入している。大型の部品を一度に成型する仕組みで、生産性が高い。

ジーテクトは既存の生産設備を活用できるため初期投資を抑えられる。ギガキャストに比べ、車体の部材のコストを最大2割程度削減できる可能性がある。今回の製法を導入すればEV全体でも数%のコストを減らせる可能性がある。

EVの普及速度は鈍っている。米ゴールドマン・サックスは米国と欧州の新車販売に占めるEVシェアの予測を下方修正した。停滞の理由は一つは、ガソリン車よりも高い車体価格にある。

脱炭素の潮流のなか、消費者に受け入れられるコスト競争力が求められている。高い競争力を持つのが中国勢で、中国最大手の比亜迪(BYD)は基本性能を左右する電池やモーターなどの重要部品を内製化してコストを下げている。

日本メーカーも生産を効率化しており、トヨタ自動車は26年に販売する次世代EVから独自のギガキャストを採用する。日産自動車も27年度から一部のEV向けに導入し、車体部材のコストを1割程度削減する。

車体コストの低減は日本車の競争力向上につながる。ただ、車メーカーが自ら一体成型することがあるギガキャストは、既存サプライヤーの販売数量を押し下げる要因にもなる。ジーテクトは生産工程やコストを抑える新技術の提案で収益確保を狙う。

(沖永翔也)

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