鹿児島県薩摩川内市の九州電力川内原発1号機が運転開始から40年を超え、最長20年の運転延長に入った。同様の原発は全国で4基目で、九州では初めて。半導体産業の集積が進む九州では原発による安価な電力が強みとされ、経済界では運転延長を歓迎する声がある。一方で老朽化への不安も根強く、九電は一層の安全性向上が求められている。
「40年は一つの節目ではあるが通過点」。九州電力の池辺和弘社長は6月26日、株主総会後の記者会見でこう語った。従来から安全性向上への取り組みに注力している点を強調し、「今後も安全性を高める知恵を出していくことで信頼を得たい」と話した。
川内1号機は1984年7月4日に営業運転を始めた。2011年の東京電力福島第1原発事故後に運転停止。原発の新規制基準ができた後、15年に全国の原発として初めて再稼働した。
新規制基準は原発の運転期間を原則40年とし、最長20年の延長を認めている。川内1号機は昨年11月、2号機とともに原子力規制委員会から延長の認可を受け、鹿児島県なども了承した。原発の40年超運転は関西電力の高浜1、2号機(福井県)、美浜3号機(同県)に次いで4基目となる。
経済界では運転延長を歓迎する声が大きい。近年、世界的に火力発電の燃料が高騰する中、原発が再稼働していない地域ほど電気代が高くなっている。半導体産業の集積が進む九州では「電気代の安さが魅力」とする経営者も少なくない。データセンターなどの進出計画があり、今後の電力需要の増加も予測される中、池辺社長は「原発を使わないリスクもある。原発が動いて電気代が安いから若い人たちが働く場がある」と話す。
二酸化炭素排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルに向け、国も原発を重視している。政府は「依存度を可能な限り低減する」としてきた方針を昨年2月、「最大限活用する」と転換。次世代原発の建設などを促進し、60年超運転も認める基本方針を閣議決定した。
ただ、新規制基準下で再稼働した原発は全国33基中12基で、福島第1原発事故以来、原発や電力会社に対する社会や自治体からの視線は厳しい状況が続く。
九州では、川内1号機よりも古い玄海原発1、2号機(佐賀県玄海町)は廃炉を進めており、40年超運転は九電にとって初めてだ。規制委の特別点検などを経ているが、熱や放射線による部材の劣化なども心配され、「市民の不安を払拭する取り組みをお願いしたい」(田中良二・薩摩川内市長)と九電に安全性向上を求める声は大きい。【久野洋】
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