東京 武蔵野市の井の頭自然文化園はサルやペンギンなど170種類を超える動物を飼育していて、年間およそ70万人が訪れます。
19日にはシステムを開発した都内の健康機器メーカーの担当者が訪れ、暑さの状況や熱中症のリスクを把握するためのセンサーを園内の6か所に設置しました。
そのうちの1つが、屋外にあり、多くの子どもたちが訪れるモルモットとのふれあいコーナーです。
また生き物の観察を行うエリアは時間帯によって気温や湿度が高くなることから、設置しました。
センサーの設置によって動物園はそれぞれの地点で、熱中症に対してどの程度注意が必要か、パソコンなどに表示された6種類のアイコンで一度に確認できるようになります。
園ではこうして得られたデータを来園者への注意の呼びかけやイベント実施の判断などに活用するとともに職員やボランティア、それに動物の健康管理に役立てることにしています。
井の頭自然文化園の管理係の伊藤皓一郎さんは「経験則ではなく、客観的に数値を測定することで、実際の対策を打つことができるのは大きい。動物、来園者、職員にとって安心安全な環境づくりに取り組みたい」とと話していました。
サービスを展開するタニタの量産設計部 山谷千秋課長は「危険なレベルに到達しそうな時に早めに対策を打つことができるようになる。いろいろな場所に設置してもらい、より質の高い対策になるようサポートをしていきたい」と話しています。
会社では、暑さの中で働く人が多い建設現場や製造業、それに学校などからのニーズを見込んでいるということです。
一人ひとりのリスクを通知
一方、大阪に本社を置くプラスチック製品の製造メーカーは、耳にかける機器で熱中症のリスクを知らせるシステムの販売をことし4月から始めました。
機器を使って測定した額の温度や気温、湿度などをもとに、一人ひとりの熱中症に対する注意のレベルが4種類のアイコンで表示されます。
また熱中症のリスクが高まった場合には、本人や管理者のスマートフォンなどに通知が届きます。
この会社ではこれまでヘルメットにつけて使う熱中症対策のシステムを販売してきましたが、今回の機器の提供を通じて、ヘルメットをかぶらずに働く人たちのニーズも取り込みたいとしています。
スターライト工業の新商品開発チーム 東島将俊担当課長は「熱中症は、それぞれの作業環境によって、危険度の差があるほか、熱中症に強い人や弱い人もいる。水分補給などの対策とあわせて使ってもらうことで一人ひとりにあった質の高い熱中症対策の実施に貢献したい」と話していました。
“新基準”でリモートワークを呼びかけ
企業の中には、暑さの状況に応じて働き方を変えることで、従業員が熱中症になるリスクを減らそうと取り組むところもあります。
スマートフォン向けの商品の開発や販売を行う埼玉県新座市の会社では、2022年の夏から日中に厳しい暑さが見込まれる場合、リモートワークの実施を呼びかけています。
この会社では20人余りが働いていて、通勤途中などに従業員が熱中症になるのを防ぐのがねらいです。
2023年までは翌日の予想最高気温を基準にリモートワークを呼びかけていましたが、熱中症対策の効果をより高めようと、ことしからは環境省が発表している「暑さ指数」が当日朝の時点で会社の基準に達した場合に呼びかけを行っています。
会社によりますと、リモートワークの実施は強制ではなく業務の予定などによって自由に判断できるということで、7月は基準に達した2日間のうち1日はおよそ2割、もう1日はおよそ4割の従業員がリモートワークを行ったということです。
こうした取り組みは以前、会社の前で高齢の女性が倒れ熱中症の疑いで救急搬送されたことや、出勤後に熱中症の症状を訴える従業員が出たことをきっかけに始めたということです。
トリニティの山本洋平副社長は「社員の体調や健康は重要で、暑い日に無理して会社に来ることで逆に仕事の効率を落とすことにもなる。経営的にも論理的に考えてもこれが最善だと考えている」と話していました。
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