カスハラ被害は小売りやサービス業で多い

帝国データバンクは23日、顧客による著しい迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」について、直近1年で15.7%の企業が被害にあったとする調査結果を発表した。小売りが3割超となるなど個人との取引が多い業界の割合が高かった。「事実無根の悪評をネットに書き込まれた」など、悲痛な被害を訴える企業もあった。

調査は6月17日〜30日に、全国約2万7000社を対象に実施した。有効回答数は1万1068社だった。

業界別にみると、最多の「小売り」は34.1%で、「金融」(30.1%)、「不動産」(23.8%)が続いた。BtoB(企業間取引)が多い「製造」(7.8%)や「運輸・倉庫」(12.9%)、「卸売り」(13.1%)などは平均を下回った。規模別では「大企業」が21.0%、「中小企業」が14.8%、「小規模企業」が14.4%となり、規模が大きい企業ほどカスハラを受ける傾向がみられた。

企業は対応に苦慮している。「自分のわがままを押し通そうとし、思い通りの結果にならないと罵倒する年配の人が多い」(金融)や「ネットに書くと脅されるほか、一方的に事実無根の悪評を書き込まれた」(小売り)との声が上がった。

カスハラが「ない」「分からない」と回答した企業からも「どこまでの発言・行為が該当するのか不明なため、判断しづらい」(情報サービス)と、対応の難しさを訴える意見が多くあった。

カスハラへの対応策を複数回答で聞いたところ、電話に録音機能をつけるなどの「顧客対応の記録」が20.1%と最も多かった。次いで「カスハラを容認しない企業方針の策定」(12.3%)や「カスハラ発生時のサポート体制の構築」(9.6%)が続いた。何らかの「取り組みあり」とした企業は50.1%、「特に取り組んでいない」は47.4%と、対応策の有無はほぼ二分された。

直近1年以内の被害が多い業界では取り組みが多かった。具体的な対策として「顧問弁護士と迅速な連絡・相談する体制を整えている」(旅館・ホテル)や「カスハラをしてきた企業との取引を停止している」(建設)のように、毅然とした態度を示す事例を挙げた。

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