日本経済新聞の取材に応じるボッシュのハルトゥング取締役会会長(23日)

独ボッシュは23日、米ジョンソン・コントロールズ・インターナショナル(JCI)と日立製作所の家庭用空調合弁会社を約80億ドル(約1兆2500億円)で買収すると発表した。同社のハルトゥング取締役会会長は日本経済新聞のインタビューに応じ、「アジアなど空調市場の成長機会は巨大だ」と強調した。主なやり取りは以下の通り。

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――家庭用空気清浄機と小規模空調を買収対象としました。大規模な業務用空調はボッシュにとって必要ないのですか。

「ボッシュは家庭向けや小規模商業施設向けにターゲットを絞っている。大規模な商業施設向けには注力していない。今回の買収はこの2つのターゲットに向けて事業を強化するためのものだ」

――欧州の家庭用エアコン市場では環境規制が強化されています。今後どの市場が成長すると予想していますか。

「欧州市場は規制次第ではどちらに転ぶか分からない。ただ一般的に市場を戦略的に見た場合、高い成長率で推移するだろう。伝統的な暖房機器からエアコン技術へと移行が進んでいることや、夏の気温が高くなっていることも追い風だ。欧州では2030年までに30%の市場成長を見込んでいる。(買収は)長期的にはいい決断だ」

――アジア市場をどう見ていますか。

「中国には多くの中産階級がいて、東南アジア諸国連合(ASEAN)にはまだ多くの発展途上国がある。アジア市場の成長機会は長期的に巨大だ」

――今回の買収は他の事業にどのように影響を与えますか。例えば自動車では電気自動車(EV)になることで空調技術がより重要になるのでは。

「この買収が他の事業部門に直接影響を与えることはない。自動車の熱管理については今回とは別のテーマだとみている。家庭用空調事業はリスク分散させるための戦略的な柱として育てたい。全ての事業部門を強固にすることで、他の事業部門にもメリットがもたらされるだろう」

――過去には富士通のグループ会社、富士通ゼネラルの買収交渉もしていました。今回、富士通ゼネラルの代わりにJCIと日立の合弁会社を買収相手に選んだ理由は。

「代わりという認識はない。今回買収を決めたのは両社の技術や事業内容が非常に気に入ったからだ。ボッシュの力をさらに高めてくれる優れたポートフォリオに注目している。建設的な話し合いを行い、双方にとって非常にいい合意に至った」

――今回の買収はどちら側から提案したのですか。

「その詳細については何もコメントできない」

――今回の買収資金はどのように調達しますか。

「買収資金は自己資本で賄う予定だ」

――主力の自動車部品事業以外で、さらにM&A(合併・買収)を考えていますか。

「まず第一に我々は今回の取引に集中している。契約書にサインを済ませ、クロージングに向けて前進していく」

(ロンドン=為広剛)

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