人工知能(AI)が新商品開発をお手伝いします――。NTT東日本のグループ会社、NTTDXパートナーが新商品考案をサポートするAIサービス「架空商品モール」を始める。AIを使って「こんな商品があればいいのに」というアイデアを磨き、商品デザインもAIが提案する。アイデアを提供してくれた一般の人たちに報酬が支払われる仕組みを導入する。
架空商品モールは、まずメーカー企業が生成AIに自社の強みや技術を日本語で学ばせる。一方、アイデア提供者はチャット形式でAIの質問に答えながら、自身の属性や趣味、悩み事や希望などを入力する。
これらの情報を基に、AIはメーカーの強みや技術力を生かし、生活者の困り事を解決できるような新商品アイデアを具体的に提示。同時にAIが商品説明やデザインなどの案も作る。
重要なのは、実際に商品化した場合に売れそうかどうか。架空商品モールにアイデアが「出品」されると、「ほしい」と思った人が投票や評価をくれる仕組みで、メーカー側は共感の広がりや需要の有無を確かめられ、商品化に乗り出すかどうか判断しやすい。開発・販売する場合にはメーカーが権利を買い取る。採用されたアイデアの提供者が受け取る報酬は数十万円程度を想定している。
開発の過程では、プロダクトデザイナーら専門家の協力でデザインを洗練したり、クラウドファンディングサイト運営会社「マクアケ」の助言を受けたりして、販売拡大に向けた事業計画を立てられるようにする。
中小企業庁の調査では、新規事業で収益化にこぎ着けられる企業は約15%にとどまる。特に地域の中小企業は「開発ノウハウや人材が不足し、ニーズ把握が難しく新商品開発はハードルが高い」(NTTDXの長谷部豊代表取締役)。原材料高騰でコストカットが優先されやすい上、新商品が売れるまでの投資負担も大きく「斬新な商品が生まれにくい負の構造」(マクアケの北原成憲専門性執行役員)がある。
架空商品モールは、8月から利用を希望する企業向けにワークショップを始め、12月以降、一般利用者から広くアイデアを募る本格的なサービス開始を目指す。NTTDXの朴在文氏は「地域活性化の一歩目。架空商品を実商品に育て、いずれはふるさと納税の返礼品などにして自治体に還元したい」と語った。【藤渕志保】
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