国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングした状態の宇宙船「スターライナー」(NASA提供・AP)

【ヒューストン=花房良祐】米航空宇宙局(NASA)と航空宇宙大手の米ボーイングは25日、6月上旬に打ち上げに成功して以来、国際宇宙ステーション(ISS)に接続したままとなっている新型有人宇宙船「スターライナー」について、地球帰還までのミッションは実現できるとの認識を改めて示した。一方、機材の不具合の試験を続けており、具体的な帰還日程は示さなかった。

NASAとボーイングが25日、記者会見を開き、現在の状況を説明した。

宇宙船は6月初旬に打ち上げて初の有人宇宙飛行に成功。ISSに到着してから当初は10日ほどで地球に戻る予定だったが、不具合が発生したため、搭乗していた宇宙飛行士2人の滞在が約50日に及んでいる。

帰還の遅れが懸念されているが、NASAマネジャーのスティーブ・スティッチ氏は「ミッションを達成し、宇宙飛行士2人を帰還させるといえる十分な理由はたくさんある」と強調した。

ボーイングのバイス・プレジデント、マーク・ナッピ氏も「安全な宇宙船を提供してクルーを安全に帰還させるのが我々の仕事だ。いい宇宙船だと自信を持っている」と話した。早ければ来週後半にもNASA高官らが不具合などを巡るデータを評価し、帰還時期について詰めの協議をするという。

スターライナーでは2つの問題が発生した。一つは推進装置(スラスター)だ。ISSにドッキングする際、28ある装置の5つで不具合が発生した。うち1つは使えなくなり、地球に帰還する際は27のスラスターで姿勢などを制御するという。

微量のヘリウム漏れも発生した。ヘリウムはスラスターに燃料を供給するために使用する。打ち上げ前に1カ所の漏洩が発覚していたが、安全に問題はないと判断していた。ISS到着後にさらに4カ所で見つかっており、漏洩の量を再び調べているという。

スラスターの不具合については25日、すでに米国内の地上設備で再現試験を実施し、温度上昇などが原因と分析したと説明した。操作方法の変更などで適切な飛行は実現できるとみているとし、27〜28日の間に宇宙船のスラスター実物で噴射試験を実施するとの計画を示した。

NASAによると、スラスターなどは大気圏への突入前に宇宙船から切り離して破棄する。このため、いまのうちにデータを収集し不具合の原因究明や装置の改善につなげたいと考えていると説明した。

もっとも、地球への帰還が大幅に遅れるなか、ISS内にいる宇宙飛行士の状況を懸念する声も上がっている。これに対し、NASAは25日、2人のベテラン宇宙飛行士は「元気だ」と説明し、必要な業務を実行していると説明した。

打ち上げ前は、電源として使う蓄電池の性能からみて宇宙船のISSの滞在期間の上限は45日と定めていた。だが、ISS到着後に充電して追加試験を実施。その結果を踏まえて、45日追加した90日の滞在でも宇宙船は問題ないと説明している。

宇宙飛行士2人は仮に、スターライナーで帰還できな場合、別の宇宙船に乗って帰る選択肢があるとみられている。

スターライナーはボーイングがNASAの委託を受けて開発した宇宙船だ。実用化に向け、初めて有人で打ち上げた。NASAは11年にスペースシャトルを退役させ、ボーイングとスペースXにそれぞれ宇宙船の開発を委託していた。今回、宇宙船が無事に帰還できないと米国の宇宙開発の痛手となる。

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