北陸で物流施設の建設が相次いでいる。関電不動産開発(大阪市)が2024年夏、石川県白山市で半導体関連製品などを想定した拠点を稼働させるほか、大和ハウス工業傘下の若松梱包運輸倉庫(石川県白山市)は25年夏に食品用の倉庫を稼働させる。製造業の増産投資や、トラック運転手の残業時間規制が強化される「2024年問題」への対応が施設を設ける誘因になっている。

近隣には電子部品や機械の工場も多い(関電不動産が建設中の拠点)

関電不動産が6月の完成を目指して建設中の倉庫は、金沢駅から車で25分前後の地点にある。4階建てで延べ床面積は約2万6000平方メートルで、最大で4テナントが入居できる。電子部品や機械などの保管を想定する。

同社は以前、白山市で倉庫を保有したことがあるが既に売却しており、北陸で再び物流拠点を持つ。関西では開発中の案件を含めて8拠点を手がけているが、競争が激しい首都圏では売却した。

今後は「半導体工場ができる地域に注目したい」という。白山市の施設から車で約15分の場所には、加賀東芝エレクトロニクス(石川県能美市)が1000億円を投じてパワー半導体の工場を3月に完成させた。9月までに生産を始める予定だ。

ラピダスが最先端半導体の生産を目指す北海道でも、札幌市内で物流施設を23年11月に取得。台湾積体電路製造(TSMC)が進出した熊本県に近い福岡県小郡市でも、24年2月に九州初となる施設を完成させている。

加えて関電不動産が想定しているのが、2024年問題に対応する中継拠点としての需要だ。太平洋側から荷物を運ぶ際、日本海側の目的地まで直接運ぶと時間がかかる。白山市の新施設を中継・保管の拠点にできれば、トラック運転手の勤務時間を短縮できる。

若松梱包運輸は本社がある石川県白山市に延べ床面積約1万4000平方メートルの物流施設を建設中だ。主に3大都市圏にある冷凍・冷蔵食品メーカーの工場でつくる商品を保管し、北陸の問屋向けに仕分けする機能を担う。

同社は自前や協力会社のトラックによる食品配送も手がけている。今後は太平洋側からの輸送時の積載効率を高め、トラックの本数を約3割減らして残業規制に対応していく考え。1台に載せる商品が増えるため、その分を新設する倉庫に留め置く。

同じく大和ハウス傘下の大和物流(大阪市)は2022年4月に石川県白山市、2023年6月に富山県高岡市で物流施設を稼働させた。主に住宅用建材向けに活用している。同社は2つの拠点を「北陸向けの2次配送の拠点と位置づけている」。3大都市圏などから北陸に運ぶ際の中継拠点として機能させる。

大和物流は北陸の中継拠点として石川県白山市に物流施設を設けた

もう1つ、北陸で物流施設開設の誘因になっているのが、ドラッグストアの急増だ。センコーグループホールディングス(GHD)は23年6月、石川県白山市でドラッグストア向けに延べ床面積3万4000平方メートルの倉庫を開設した。北陸でドラッグストア用の拠点を開くのは18年以来だ。

北陸では石川県に本社を置くクスリのアオキホールディングスなど地元勢のほか、ウエルシアホールディングス、コスモス薬品、スギホールディングスなどが出店を競っている。センコーGHDは北陸で繊維や食品の物流に重点を置いてきたが、店舗数が増えるドラッグストア業界に焦点を合わせて需要を獲得する。

(国司田拓児)

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