ホンダと日産自動車が電気自動車(EV)で全面的に協業する。EV基幹部品や車載ソフトウエアの共通化だけでなく、電池の供給まで一気に踏み込む。EVは中国勢が価格競争力で突出し、日本勢は大きく出遅れている。EV部品の供給網を迅速に構築できるかが問われる。
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「今までの開発の概念を捨て、スピード感を持って競合をとらえていく必要がある」。1日、都内で記者会見したホンダの三部敏宏社長は危機感を示した。
ホンダと日産は3月から協業に向けて検討を進めてきた。今回、EVを構成する電池とソフト、駆動装置の3つの重要な分野で全面協業を決めた。
陣営枠組み、トヨタ超え
今回の全面協業は、マツダなどが加わるトヨタ自動車陣営の提携より踏み込んだ内容となっている。巨額投資の負担を抑え、実用化のスピードを速める狙いがある。三菱自動車が加われば、よりコスト負担を抑える効果が見込める。
特に効果が大きい分野の一つが車載電池だ。ホンダは電池生産の整備に巨費を投じている。日産に車載電池を供給することによって、負担を抑えられる利点がある。車載電池の仕様の共通化でも基本合意しており、日産の内田誠社長は記者会見で「コストダウンが期待できる」と話した。
自動運転などの制御に欠かせないソフトの共通化も、コスト軽減につながる。ソフトに関してもホンダが2030年までに2兆円を投じる方針を打ち出しているなど、巨額の投資が必要となる。
両社が全面協業に踏み切るのは、世界的なEVシフトの流れに出遅れているためだ。日産は10年にEV「リーフ」の量産を始めるなど先行したが、足元では米テスラに加え、中国EV大手の比亜迪(BYD)に主導権を握られている。
23年のEV世界販売台数は日産が14万台、ホンダが1万9000台にとどまる。テスラは180万台、BYDは157万台と大きく差を広げられている。中国勢は価格競争力で突出している。中国の低価格EVが日本車の強い東南アジアなどにも広がり始めている。
中国苦戦で世界戦略は見直し
日本が強かった中国では苦戦が鮮明だ。ホンダはガソリン車の生産能力の3割にあたる50万台を削減する方針を決め、世界戦略の見直しを迫られる事態になっている。
全面協業に至ったが課題は多い。その一つが、EV部品の供給網の構築だ。
今回の提携にあたっては、EVの駆動装置「イーアクスル」の仕様の共通化を目指すにあたって、ホンダが40%を出資する部品会社の日立Astemo(アステモ)を軸に開発を進める。ただ、EV部品の共通化が難しい側面がある。
日本の車メーカーは「ケイレツ」と呼ばれる既存の部品供給網から優先的に調達してきた。ホンダ・日産が既存のケイレツの壁を越え、いかに供給網の構築を進められるかが重要となる。
大提携、成否は見通せず
自動車再編はうまく進まないケースが多い。独ダイムラー・ベンツが米クライスラーを1998年に買収・合併して生まれた「ダイムラークライスラー」。業界再編の火付け役となったが、経営方針の違いから両社は2007年にたもとを分かった。
ホンダの三部社長は資本提携まで踏み込むことについて、「可能性として否定するものではない」と語った。ホンダと日産がいかに円滑に連携を進められるか。取り組みの行方が両社の将来を左右する。
(落合修平、沖永翔也)
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