「GDS2024世界デジタルサミット」でAI時代における電力問題への対応を議論した。(右から)NTTの川添雄彦副社長、インテル日本法人の大野誠社長、国立情報学研究所の佐藤一郎教授、PwCコンサルティングの三治信一朗執行役員パートナー(2日、東京都千代田区)

「GDS2024 世界デジタルサミット」(主催:日本経済新聞社)2日目の2日には、人工知能(AI)と電力をテーマにパネル討論が開かれた。NTTの川添雄彦副社長やインテル日本法人の大野誠社長らが登壇し、AIの活用とサステナビリティー(持続可能性)の両立について議論を交わした。

生成AIは社会を変革する可能性を秘める一方、膨大なデータを処理するため大量の電力を消費する。生成AIの基盤となる大規模言語モデルの1回あたりの学習に必要な電力は原子力発電所1基を1時間稼働させるのに相当するとの試算がある。生成AIが質問に答える場合には一般的な検索と比べて約10倍の電力を使うとされる。

日本における2033年のデータセンターの電力消費量は国内の総電力需要の5%を占める見通しだ。PwCコンサルティングの三治信一朗執行役員パートナーは「他の地域と比較しても伸び率が高い」と日本の現状を指摘し、対策が急務だと訴えた。

インテルの大野社長は「AIは今後パソコンなど全ての個人端末に取り込まれていく機能だとみている」との見解を示した。一方で「半導体そのものの電力消費抑制には限界が見え始めてきた」とも述べた。テクノロジーの発展を妨げず、省電力も可能にする技術が必要になる。

NTTが開発中の次世代通信基盤「IOWN(アイオン)」は、電気処理を半導体の内部まで光に置き換えることで消費電力を大幅に抑える。インテルも実用化へ向けて連携する。NTTの川添副社長は開発のロードマップを示し「光の処理を広げることで消費電力は100分の1まで抑えられる」と述べた。

国立情報学研究所の佐藤一郎教授は「AIの電力消費を減らす決め手がない状態だが、様々な方法を試すしかない」と述べた。電力供給に応じてデータ処理のタイミングや場所を選ぶことも有効だと説明した。

AIと共に目指す社会のあり方についても議論を交わした。インテルの大野社長は「AIは電力を消費するだけのツールではない。持続可能な社会のためにどう使うかにも向き合うべきだ」と述べた。NTTの川添副社長は「AIとともに人類が進化していく社会を目指したい」と述べた。

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