食品メーカー大手「日清食品」は、カップめんなどの希望小売価格について、おととし、5%から12%値上げした上、去年も10%から13%の値上げを行いました。

しかし、関係者によりますと、日清食品は「カップヌードル」や「日清焼そばU.F.O.」など5つの商品について、値上げした希望小売価格にあわせて、小売店に対し販売価格を値上げするよう要求していたということです。

要求に応じれば、セール商品を小売店に安く卸す「特売」の際に価格交渉に応じることなどを伝えていたということです。

これについて、公正取引委員会は、独占禁止法で禁じている「再販売価格の拘束」にあたるおそれがあるとして、近く、日清食品を文書で警告する方針を固めたということです。

小売店が仕入れた商品を客に「再販売」する際にメーカーが指定した価格を守らせる行為は、消費者が本来なら安く買えたはずの商品を高く買わなければならなくなり、メリットを奪われるなどとして、独占禁止法で禁止されています。

食料品などの値上げが相次ぐ中、公正取引委員会は、価格への転嫁が適正に行われているか、監視を強めています。

販売価格の値上げ指示 実態は

百貨店やスーパー、ドラッグストアなど小売店で商品が販売される際の価格は、通常、メーカーから仕入れた卸売業者と小売店との商談によって商品を安く仕入れたり、経費を抑えたりと店の工夫や努力などによって競争する中で決まります。

しかし、関係者によりますと、今回、メーカーの日清食品は、本社で決めた希望小売価格の値上げを全国の支店に伝えたあと、その支店の営業担当者が卸売業者と小売店との商談の場に同席して、希望小売価格にあわせて販売価格も値上げするよう直接、指示していたということです。

さらに、ライバルの店との競争への影響を懸念する小売店には、「ライバルも値上げに同意している」といった内容の話を伝えるなどしていたということです。

そして、販売後は、支店の営業担当者が小売店に出向き、値札の写真を撮影したり、購入してレシートを保管したりして、価格のチェックを徹底していたということです。

こうした独占禁止法違反のおそれがある取り引きが行われていた小売店は全国で100を超えるとみられます。

専門家「不公正な方法で値上げ実現は不当」

独占禁止法に詳しい同志社大学大学院司法研究科の小林渉特別客員教授は「最近の値上げラッシュの背景にはコストの上昇があり、企業としても価格を上げざるをえないという側面があると思うが、消費者サイドの視点も含めて考えれば、こうした不公正な方法で値上げを実現するのは不当だと考えられる。人気商品の価格が上がれば競合する商品も価格を上げやすくなり、その分野の商品全体の価格帯や相場が上昇する可能性がある。メーカーは取り引き上の力関係だけにものを言わせるのではなく、条件についてよく協議して対等な当事者として取り引きを行うことが求められる」と指摘しています。

また、公正取引委員会が最も重い行政処分の「排除措置命令」などではなく行政指導の「警告」とすることについては「『再販売価格の拘束』は違法性の高い行為で、本来ならば排除措置命令が出されてもおかしくないと思う。個別の事情は承知していないが、さまざまな商品の値上げが行われている中で、命令を出すための厳格な調査に時間をかけるよりも、世の中に周知・啓発するために迅速に処理することを優先したという背景が考えられる」と話しています。

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