住友不動産が開発したビル(6月中旬、東京都中野区)

不動産開発の大手5社の2024年4〜6月期連結決算が8日、出そろった。3社が営業増益だった。リモートワークからの出社回帰の流れを受け、オフィス賃貸事業が好調を持続した。マンション価格の上昇やインバウンド(訪日外国人)の増加もマンション分譲やホテル事業の追い風となった。

同日、決算を発表した住友不動産の4〜6月期の営業利益は前年同期比26%増の981億円で、同期間として過去最高益を更新した。三菱地所も7%増の517億円だった。既に決算を発表した三井不動産も最高益を更新している。野村不動産ホールディングス(HD)や東急不動産HDは物件売却が減少した反動で減益となったものの、期初の計画通りだという。

新型コロナウイルス禍が一時期と比べて収まったことから、企業が社員に出社を求める動きが広がり、オフィスビルの需要が強まった。特に丸の内や日本橋など一等地の大型ビルの空室率は2〜3%程度で推移しており、需給が均衡する目安となる5%を大きく下回る。賃料の引き上げにもつながりオフィス賃貸事業の収益性が高まっている。

マンション事業も好調に推移する。用地の仕入れ価格や建築コストは上昇しているが、大手が得意とする都市部を中心にマンション需要の高まりが持続。コスト増分を価格転嫁し、利益を確保する。住友不動産の4〜6月期の不動産販売事業の営業利益は533億円で、同部門の通期予想に対する進捗率は97%に達する。

インバウンド需要も業績を押し上げる。三菱地所はホテルやアウトレットモールが好調で、コマーシャル不動産事業の営業利益が前年同期比15%増となった。ホテル事業は新型コロナ禍で逆風が続いていたが、足元では各社とも稼働率・客単価の上昇で収益源となっている。

各社は融資や社債発行で調達した資金を使って大規模な再開発事業に取り組んできた。大部分は固定金利で調達しており、政策金利引き上げに伴う業績への短期的な影響は限定的とみられる。一方、一部の銀行が住宅ローンの変動金利を引き上げており、こうした動きが広がればマンション販売に影響が出る可能性がある。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。