Dr.つるかめキッチンは専門医・管理栄養士が監修した健康志向のメニューを提供している

賞味期限が近い食料品などを低価格で販売する通販サイトを運営するクラダシは冷凍宅配弁当事業に参入する。専門医らが監修する冷凍宅配弁当「Dr.つるかめキッチン」を運営するクロスエッジ(東京・品川)を23日付で買収する。クラダシは7月に移行した新経営体制の元で事業の幅を広げ、新たな収益源を育てることを目指す。

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Dr.つるかめキッチン事業の年間売上高は7億円規模で、クラダシの売上高(2024年6月期)の2割強に相当する。主な顧客は40〜60代で、各分野の専門医や管理栄養士が監修した健康志向のメニューが特徴だ。例えばカロリーを控えめにした「カロリー制限気づかい御膳」は定期コースの7食セットで5184円となる。

クロスエッジの取得額は5億1700万円。クラダシは買収資金を新規借り入れで賄う。買収後にクロスエッジを会社分割し、Dr.つるかめキッチン事業以外を新設会社に分社化。新会社の全株式はクロスエッジの旧株主に売却し、冷凍宅配弁当事業のみのクロスエッジをクラダシの完全子会社とするスキームだ。

クロスエッジという社名は将来変更する予定だが、「Dr.つるかめキッチン」の名称は使い続ける見通し。今後サイトのリニューアルや商品のクオリティーの向上に向けた施策などを検討するほか、20〜30代にも利用を広げていきたい考えだ。

クラダシの河村晃平社長は冷凍宅配弁当事業への参入理由として、「市場規模の大きさや成長率の高さに加え、(従来のクラダシで対象としていなかった)家庭のフードロス削減にもつなげられる」ことを挙げる。

クラダシは現在、加工品など一次流通からあふれた廃棄対象となりうる商品を扱うなど、事業で出るフードロスを対象としている。一方で冷凍宅配弁当は自宅で調理しないことにより、調理工程や食べ残しなどの廃棄が減り、間接的に家庭のフードロス削減にも貢献できるとみる。

Dr.つるかめキッチンは定期便を手掛け、案件が出てきた時に商品を販売するクラダシとはビジネスモデルも異なる。売れ筋商品ができれば安定的な売り上げとなり、顧客との継続的な接点の創出にもつながる。

河村社長は「当然ながらまずは独立独歩で(それぞれの事業を)しっかり伸ばしていく」としつつ、両者のシナジーにも期待をかける。相互に取引先を紹介したり、マーケティングのノウハウを共有したりするほか、クラダシが持つ電子商取引(EC)運営の知見やブランディング力などをDr.つるかめキッチンでも生かしていきたい考えだ。

冷凍宅配弁当市場は多くの企業が参入し、競争が激化している。ただ、nosh(ナッシュ、大阪市)が先行し、それ以外の企業を大きく引き離しているのが現状だ。Dr.つるかめキッチンの売り上げは7億円ほどでナッシュをなどとの差は大きいが、河村社長は「まずは数十億円規模に育て、業界2位を狙いたい」と話す。

クラダシの河村社長はDr.つるかめキッチンを育て、「まずは業界2位を狙いたい」と話す

クラダシは7月1日付で河村氏が新社長に就任し、あわせて社内カンパニー制も導入した。事業部ごとに採算性を追い求める体制を強化し、意思決定のスピードも速める。現在はECカンパニーが売り上げの約9割を占めるが「将来はECカンパニーとそれ以外の事業で半々のバランスになるくらいまで成長させたい」(河村社長)と意気込む。

(米田百合香)

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