富裕層を主な顧客としていた自動車メーカーなどにパワーファミリーを意識した動きが出てきた。
クレジットカードの三井住友トラストクラブ(東京・中央)と独BMW日本法人は4月、BMW傘下の小型車ブランド「MINI(ミニ)」の購入者専用のクレジットカード「MINIダイナースカード」の発行を始めた。三井住友トラストクラブがグローバル企業との提携カードを発行するのは12年ぶりだ。
「MINIは女性のオーナーも多く、年齢層もBMWより若い。BMW専用カードとは異なったサービスを体感してほしい」。3月に開いた新カード発表会で、三井住友トラストクラブの五十嵐幸司社長はこう語った。一方、BMW日本法人の金融子会社ビー・エム・ダブリュー・ジャパン・ファイナンス(東京・港)のフランソワ・モーリ社長も「多様化するライフスタイルに合わせて、MINIの車両購入をサポートしたい」と新カード発行による車両の販売促進に期待を寄せた。
MINI、若い顧客に開拓余地
ダイナースは富裕層向けで知られ、既にBMW車オーナー向けには専用カードを発行している。BMW専用カード所有者の間で「MINI専用カードはできないのか」という要望も根強く、今回の発行に至ったという。MINIダイナースカードは、MINI正規ディーラーでの車両購入代金の支払いにも利用可能で、その場合200円につき、ダイナースのポイントが1ポイントたまる。
BMW車は500万円以上のモデルが中心で、オーナーの年齢層は比較的高い。この層には、BMWブランドは十分に浸透している。
一方、400万円前後で比較的若年の層に支持されているMINIにはまだ顧客開拓の余地が多く残されていた。そこでBMWは新たなカードを発行し、パワーファミリーを中心とする若い顧客を囲い込もうという算段だ。
日本自動車輸入組合(JAIA)によると、MINIの日本での新規登録台数は2023年が前年比8.3%減の約1万7800台。台数は18年(約2万6000台)をピークに減少傾向にあるが、車種別では輸入車で1位と、絶大な人気を誇る。
ダイナースカードの保有者は「ダイナースのポイントがたまる」「車両故障時に24時間対応してもらえる」といったことに加え、特別なサービスが受けられる。
特に好評なのが、家族向けサービスだ。パワーファミリーなどを意識し、充実化を図っている。
英国名門校の講演会に殺到
例えば、23年に「英国文化を通して英国名門パブリックスクールについて知ろう!」と題した講演会を開催した。英国の名門私立校イートン校とハロウスクールの卒業生が、実際の学校生活や英国の文化・教育制度などについて語る会を初めて開いた。「将来子供を留学させたい」などと考える教育に熱心なパワーファミリー層の関心を集めた。
三井住友トラストクラブの担当者は「当初は40人の枠だったが倍以上の応募があり、会場を広い場所に変更した」と話す。同社は24年もこうした説明会を開くことを検討中だ。
また同社では「子供と一緒に有名レストランで食べたい」「子供に食事マナーを学ばせたい」というファミリーのニーズを踏まえ、子供のメニュー1人分が無料になるサービス「Family Table」も始めている。「有名店なので行きたいが、子供連れでも大丈夫だろうか」と不安を感じる家族が安心して利用できる。
ダイナースカードでは、パワーファミリーを中心とした富裕層向けの多彩なサービスを今後も展開する予定としている。
(日経ビジネス 小原擁)
[日経ビジネス電子版 2024年5月10日の記事を再構成]
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