発がん性が指摘されている有機フッ素化合物(PFAS(ピーファス))を新技術で除去する事業を進めようと、静岡市は21日、天然水の販売や浄水装置の開発などを手がける「Aホールディングス」(山梨県富士吉田市)と包括連携協定を結んだ。市議会の承認を経て、10月に設立する新会社に共同出資する方針だ。

 難波喬司市長が21日、東京都港区のホテルでAホールディングスの粟井英朗社長と協定書に調印した。

 静岡市内では、清水区三保の化学工場の周辺から国の暫定目標値(1リットルあたり50ナノグラム)を超える濃度のPFASが検出された。とくに工場前の三保雨水ポンプ場の排水からは最大2万1千ナノグラムが検出され、排水管の補修や活性炭による除去をしても3千~4千ナノグラムが出ている。

 市はこうしたPFASの除去事業に自ら乗り出すのを皮切りに、環境問題を解決する企業が集まる「環境先進都市」をめざす。

 Aホールディングスは今春、超微細気泡(ナノバブル)と薬剤でPFASを水から分離し、亜臨界水を使って無害化する「亜臨界水総合システム」による除去を市に提案した。子会社のウォーターアリンテック(静岡市)が7月から三保雨水ポンプ場で実証実験を始めたところ、8割超の除去に成功したという。

 この結果を受け、両者はこのシステムを使った除去技術の開発を進め、実用化することで合意した。協定では、除去率を9割超にしてポンプ場の排水を暫定目標値以下にするほか、新会社をつくってPFASや放射性物質の除去、CO2削減などの技術開発と実用化を進める。来年1月に具体的な事業計画を発表するという。

 調印式で難波喬司市長は「PFAS除去で成果が出ており、実用化を期待したい」と話した。また、市が環境関連企業に参画する「GX(グリーントランスフォーメーション)出資制度」をつくる考えも示した。9月の市議会で提案し、認められればPFAS除去の新会社が第1号になる見通しだ。

 Aホールディングスの粟井社長は「社会問題の解決に向け、一緒に世界に打って出ようと賛同してもらった。必ず成功させたい」と話した。(大海英史)

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