メモリーはAI向け需要が伸びる(キオクシア北上工場)

半導体メモリー大手のキオクシアホールディングス(HD、旧東芝メモリ)が23日、東京証券取引所に上場を申請したことが分かった。10月の上場を想定している。時価総額は1兆5000億円超を目指し、2024年最大の新規株式公開(IPO)になる見通しだ。人工知能(AI)の普及に伴って需要が拡大するメモリーの投資競争に備える。

キオクシアはデータ記憶用のNAND型フラッシュメモリーで世界3位。18年6月に東芝から独立し、19年10月に現社名に変更した。米投資ファンドのベインキャピタルと韓国のメモリー大手SKハイニックスによる特別目的会社が計56%出資し、東芝も41%出資している。東芝とベインはキオクシアの上場後、保有株を段階的に売却する。

上場時の時価総額が1兆5000億円を超えると、23年最大のIPOだった半導体製造装置のKOKUSAI ELECTRICの4200億円を上回る。24年10月を目指して上場準備を進めている東京地下鉄(東京メトロ)の想定額(6400億〜7000億円規模)も超え、18年のソフトバンク(7兆1800億円)以来の大型案件となる可能性がある。

キオクシアは日本経済新聞の取材に対し「適切な時期の上場を目指して準備を進めている」とコメントした。

キオクシアは20年に東証に上場を承認されたが、米中貿易摩擦の激化を受け、市況の先行きが不透明だとして上場を直前で延期した。その後、米ウエスタンデジタル(WD)のメモリー事業との統合交渉を進めた。NAND3位のキオクシアと4位のWDが合併して首位の韓国サムスン電子に対抗する狙いがあった。ただ、中国の独禁法当局の審査を通過するメドが立たないまま、23年10月に交渉は打ち切られた。

再び上場を目指すのは、事業環境が改善していることがある。メモリーの主力市場であるスマートフォンやパソコンの需要が底打ちし、24年4〜6月期の連結純利益は698億円と同期間として最高だった。AIデータセンター向けの需要も拡大するなか、借り入れに頼っていた資金調達の手段を増やして投資競争に備える。

キオクシアは24年3月期に2437億円の最終赤字を計上するなど2期連続の赤字に陥った。22年後半以降にパソコンやスマートフォンの消費が低迷したあおりを受けた。足元の業績回復ペースが鈍れば、上場時の時価総額は20年の公募・売り出し価格の仮条件から算出した約1兆5000億〜1兆8800億円を下回る可能性もある。

NAND2位のSKとの関係も焦点だ。同社はキオクシアの新株予約権付社債(転換社債=CB)を保有しており、上場後に約15%の株式を取得する。キオクシアとWDのメモリー事業の経営統合に合意しなかった経緯もあり、経営戦略を巡って摩擦が生じる懸念がある。

【関連記事】

  • ・キオクシア、698億円の最終黒字 4〜6月で2年ぶり最高
  • ・キオクシア、岩手の新工場棟の建屋完成
  • ・キオクシア、最先端メモリー7月内に量産 三重県で

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。