製材業の須山木材(島根県出雲市)が持続可能な林業を目指して事業領域を広げている。主力の住宅向け建材では、成長分野である大型の公共施設向けの供給を増やし、木の端材を使った小物ビジネスにも本格参入した。社有林を利用した二酸化炭素(CO2)排出枠の販売収益で森林の保全・整備にも取り組む。
同社は1877年の創業以来、ふすまや障子などの建具材や製材、付加価値を付けたプレカットを手がけてきた。須山政樹社長は「時代に合わせて事業を変化させてきた」と説明する。
現在の主力事業の一つが木材のプレカットだ。建材のホゾなどを加工して提供するため、すぐに組み立てられる。大工の手作業が減りコストと工期短縮につながる。3次元CAD/CAM(コンピューターによる設計・製造)を導入し、専用工場で精度の高い製品を安定供給できる。
資材高などの影響で住宅着工は減少が続く。注力するのは大型木造建築向けの住宅材だ。2010年に公共建築物木材利用促進法が施行され、学校や病院などの施設を木造で建てる動きが広がる。
同社は大型建材向けのプレカット加工機を導入するなど供給体制を整えた。自治体や設計会社に木造建築の採用を働きかける。公共施設の老朽化などで建て替えが広がれば「市場規模は倍増の可能性がある」(須山社長)
新建材として、インドネシアから輸入を始めた「ウリン」の活用も提案する。熱帯雨林で育つ木で、水で腐らず夏でも表面が熱くならない。戸建て住宅のウッドデッキに最適といい、売り込みを強化する。
新規事業としては木材の端材を使った小物販売を伸ばす方針だ。
「WOOD&GROVE」と「出雲ひのき」のブランドで、スマートフォン用スタンドなど約30種類をネット販売する。昨年新設した本社ビルには商品撮影用のスタジオも設けた。月500万〜600万円の売上高を早い段階で倍に増やしたい考えだ。
山林の保全活用に向け、CO2排出枠ビジネスにも今後力を入れる。
このほどホームセンターのジュンテンドーに排出枠100トン分を売却した。須山木材は島根県内に1000ヘクタールの山林を保有しており、そのうち125ヘクタールを活用して7000トンの排出枠の認定を受けている。
同社は排出枠販売を企業の社会的責任(CSR)活動として重視する。売却益で山林活性化の一部費用をまかなう。間伐のほか大型車が入れる林道の整備も進める。
機械化で人手頼みの働き方を変え「林業を志す若者を増やしたい」と須山社長は話す。県産材の活用が進めば森林が若返り、CO2吸収量の拡大も期待できるという。
須山社長は「なんとか未来に森をつないでいきたい」と信念を語る。地球温暖化が進むなか、木を扱う業者として持続可能な林業に向けた最適解を探っている。
(田中伸樹)
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