米会員制量販店のコストコが24日、沖縄県での初店舗を同県南城市にオープンさせる。国内35店舗目となる沖縄南城倉庫店は那覇市中心部から車で30〜40分かかるが、すでに会員登録の行列ができるなど盛り上がりを見せる。南城市はコストコの出店を「起爆剤」として周辺開発など地域活性化を図る。
「沖縄出店が夢だった。圧倒的な集客力で地域経済を活性化する」。コストコホールセールジャパン(千葉県木更津市)のケン・テリオ日本支社長は16日、開店準備が進む店内で意気込みを語った。
東京ドーム1.3個分、5万9000平方メートルの広大な敷地に1万4000平方メートルの店舗を平屋で建設した。屋外に800台以上の駐車場を設けている。
16日は開業前の平日にもかかわらず、駐車場には多くの車がとまっていた。目的はコストコでの買い物に必要な会員登録だ。開業までに登録すると年会費(個人で4840円〜)が1000円引きになるキャンペーン中で、希望者が行列をつくっていた。
コストコは卸値に近い価格で商品を販売し、年会費を売り上げの柱にしている。会員登録に訪れた同県糸満市在住の30代男性は「仕事でそばを通るので頻繁に来たい」と話した。数は非公表だが、沖縄南城倉庫店の事前登録者数は全国でも上位3位に入るという。
食品や日用品のほか、テレビなどの家電、衣類、医薬品などを扱う。品数はおよそ3400点と一般的な大型スーパーの1割に満たないが、ジャンルは幅広い。「小売りではなくテーマパーク」(小川恭一店長)といい、数十個入りのパンや30個で1セットのトイレットペーパーなど大容量のインパクトも魅力だ。
地域の雇用促進にも効果がある。コストコは全国一律の賃金基準で、沖縄南城倉庫店の従業員300人は時給1500円以上で採用している(沖縄県の23年度最低賃金は896円)。人材流出を抑制するだけでなく、県外から働き手を呼び込む機会になっている。
サザランド澪さん(28)はコストコへの就職を機に東京から沖縄へ6月に移住した。マリンスポーツ好きで沖縄行きを希望していたが、給与水準がネックだったという。「コストコじゃなかったら大阪の実家に帰っていた」と振り返る。
コストコでは大容量品をはじめ、車で運ぶことを念頭にした商品が多い。沖縄は鉄道網が弱く車移動が中心で、世帯あたりの保有台数はおよそ1.3台と全国平均を上回る。米軍基地があることも特徴で、県民は海外商品になじみがあり、米軍関係者の利用も見込まれている。
ケン・テリオ氏が「地域経済の活性化」と主張した背景には住宅など周辺の開発を促したい意向もある。南城市の人口は4万7000人ほどで、店舗の周辺は未開発のエリアも多い。相乗効果で郊外にある店舗の顧客を増やしていきたい考えだ。
南城市はコストコ出店を契機に周辺を一気に発展させることを目指す。コストコに隣接する市有地の開発事業を公募で募り、4月に岩手県の事業者が代表の企業体と協定を結んだ。26年度にも着工する見通しだ。
もともと店舗周辺のエリアは住宅と畑が中心で商業要素に欠けていた。市の担当者は「コストコのおかげで人の流れが多くなる。誘客力を生かして農家の所得向上につながる取り組みをしたい」と話す。農畜産物を加工して提供する施設やホテルなどを建設する予定だ。
南城市には世界文化遺産の「斎場御嶽(せーふぁうたき)」など沖縄本島を代表する観光地が多い。キッチン付きの宿泊施設が増えており、観光客がコストコを利用してそのまま宿泊するなどのケースが想定される。店舗近くには高速道路のインターチェンジも開設予定で、市は観光分野への波及効果も期待している。
(浦崎唯美子)
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