説明会に出席したイトーヨーカ堂の小山遊子総括マネジャー㊧ら(29日、東京都大田区)

イトーヨーカ堂は29日、家庭で使った食用油の回収を9月から都内にあるイトーヨーカドー24店全てで実施すると発表した。当面は回収した廃食油をせっけんなどで再利用する。ENEOSなどと連携し、将来的には再生航空燃料(SAF)の原料にも使う。国内で年間10万トンに上る家庭の廃食油の有効活用を進めていく。

外食産業や食品製造業など事業系から出る廃食油は年40万トンあり、大部分は飼料原料や工業原料などに再利用されている。一方で、家庭で使った食用油は回収の仕組みが整っておらず、多くが可燃ゴミで廃棄されているのが現状だ。

ヨーカ堂は2023年2月から、家庭で使った食用油の回収を一部店舗で順次始めた。今回は対象店舗をイトーヨーカドーの都内全店に拡大し、25年度までにヨークを含めた217店全店で行う。同時期までに23年の開始からの累計で25トンの回収を目指す。

各店舗のサービスカウンターで無償提供する専用ボトルで集めた廃食油は、廃油収集や精製を手掛ける吉川油脂(栃木県佐野市)がせっけんやインク溶剤などで活用する。

将来的にはSAFの原料として再利用する。SAFは廃食油などからつくり、原料調達から消費までの過程で既存のジェット燃料より二酸化炭素(CO2)排出量を約8割減らせる。ENEOSは石油精製を止めた和歌山製造所(和歌山県有田市)で、スーパーなどで回収した廃食油も使い27年にSAFの生産を始める予定だ。

ヨーカ堂の小山遊子総括マネジャーは29日開いた説明会で、「消費者にはスーパーへの買い物ついでに、(リサイクルに向け)トレーやペットボトルを持っていく文化が定着している」と説明。家庭で使った食用油についても回収率を高める考えを示した。

【関連記事】

  • ・JALやセコマ、新千歳空港で廃食油原料の燃料を通年利用
  • ・ENEOS、JAL向けに海外のSAFを輸入販売 国内元売り初
  • ・ANA、SAF輸送で京セラに初の荷主証書 CO2削減示す
  • ・成田空港、伊藤忠やJALとSAF促進 航空の脱炭素後押し

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。