中国の国旗=ゲッティ

 中国のSNS(ネット交流サービス)で、日本の化粧品に対するネガティブな投稿が減っている。2023年8月に始まった東京電力福島第1原発の処理水海洋放出は、中国による日本産水産物の全面輸入停止に加え、現地で人気の高い日本製化粧品の販売にも強い逆風になったが、そうした悪影響もようやく収まってきているようだ。

 処理水の放出を受け、中国国内では日本の化粧品の「不買リスト」が作成され、SNS上で拡散された。中国を中心に越境電子商取引(EC)支援事業を行うNOVARCA(ノヴァルカ、東京)によると、23年は前年比で2~5割ほど売り上げが減少したブランドが多かったという。

 化粧品の中でも影響が大きかったのは、化粧水などのスキンケア製品。浜野智成社長は「『水』と関連づけたイメージを持たれてしまった」と分析する。

 同社は消費者心理の変化をつかむため、中国のSNS「小紅書」での日本のスキンケア製品に関する投稿の傾向を比較した。その結果、ネガティブな投稿は23年4月の1・5%から、処理水が最初に放出された8月に12・7%まで急上昇。その後は減少に転じ、今年3月には3・2%まで減少した。これに対し、ポジティブな投稿は23年8月に11・3%まで減った後、今年3月には20・2%を占めるようになり、ネガティブな投稿を逆転した。

NOVARCA・浜野智成社長=同社提供

 23年に売り上げが急減したのは、中国では現地のインフルエンサーの活用が必須のマーケティング手法になっているという事情もある。インフルエンサーが日本製品を紹介して批判にさらされることを恐れ、日本企業は広告宣伝を縮小せざるを得なかったとみられる。

 浜野社長によると、今年に入ってからは「不買もほぼ沈静化している」といい、インフルエンサーの活用も再開。中国事業でのダメージが大きかった資生堂も「着実な回復基調にある」としている。【町野幸】

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